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国家公務員採用半減の方針 若者にしわ寄せに怒りの声

   国家公務員の採用を2011年度分から半減させるという政府方針が、受験者らの怒りを買っている。あまりに拙速で、就職難に苦しむ若い世代のことを考えていないというのだ。現職世代の給料を減らすなどしなければ不公平だ、という声も大きくなっている。

   2万人もが参加するミクシィの公務員試験対策コミュニティ。国家公務員一般職の採用半減方針が2010年4月27日に報じられると、強い不満の声が渦巻いた。

「あとは中国に出稼ぎでもしろというのか?」

本当に実行できるのか
本当に実行できるのか

   「いきなり半減は鬼畜すぎ」「せめて半年ぐらい前に言えよ」「心が折れそうだ…」「政府まで採用削減…」「民間もだめ、公務もだめ、あとは中国に出稼ぎでもしろというのか?」…

   もし半減すると、約4500人の枠が消えてしまうことになる。それも、現在準備している受験者が直接対象になるだけに、ショックが大きいわけだ。

   鳩山政権は、天下りあっせんの全面禁止を打ち出しており、それだと中高年の肩たたきが減って人件費が膨れあがってしまう。民主党は09年の総選挙で国家公務員の総人件費2割削減をマニフェストに掲げており、それを達成するには結局、若者の採用を絞らざるをえなくなる。

   深刻な不況で、民間企業が採用を極端に絞っているときだ。それにもかかわらず、政府が若者にしわ寄せを求めることに、反発も強いようだ。

「この時期にそんなの決めるって 若年層の雇用問題考えてなさすぎ」
「正直…議員定員及び給与削減をまずしてからにしてほしい」
「政治の場がジジイだけだから、ジジイ有利の国づくり」

   ミクシィのコミュニティでは、こんな怒りの声が見られた。公務員労組からもバックアップを受ける民主党政権が、抜本的な公務員改革に踏み込もうとしないことに、もどかしい思いだけが残るようだ。採用半減を打ち出した原口一博総務相の27日の会見でも、給与引き下げなどはまったく言及されないままだった。

「現職世代の給料を減らせ」との声が多い

   キャリアと言われる幹部候補を選ぶ国家Ⅰ種試験は、この不況下での公務員人気もあって、2010年度は申込者数が前年度より2割も増えた。それだけに、募集人数が減ればさらに難関になることも考えられるが、どうなのか。

   LEC東京リーガルマインドで公務員講座を持っている大野純一講師は、「Ⅰ種は、ある程度採用する方向だと聞いています。ですから、そんなに大きな変動はないでしょう」とみる。原口総務相は4月27日の会見で、マニフェストに掲げた地方の出先機関原則廃止を進めるため、出先機関の採用を2割以内に抑制する考えを示しており、ここにはキャリアは出向者ぐらいしかいないからだ。

   ただ、大野講師は、Ⅱ・Ⅲ種の試験には、影響が出る可能性があると言う。

「Ⅱ種は、政府が力を入れれば、減るでしょう。国家と地方との併願が多いので、その場合は地方に流れることになります。都市部の自治体では、団塊世代の大量退職で人員が不足していますが、それ以外の地方では、競争率がかなり高くなるでしょうね。一番影響が出そうなのが、Ⅲ種です。現業の民間委託が進んで募集が減っていますので、人員削減が加速してかなり厳しくなるでしょう」

   同校でも、受験者らからの問い合わせが来ており、不安な様子だという。

   また、別の公務員予備校の講座担当者も、受験者が地方に流れて競争が厳しくなると分析。「ネット上を見てみると、『若者の雇用を縮小してどうする』『現職世代の給料を減らせ』との声が多いようですね。行く先が減って、若者が職を探すエネルギーがなくなっているように感じます。ニートやフリーターを選んでいかざるをえないのか、といった不満を持っているようです」。

   もっとも、政府幹部の発言がコロコロ変わり、10年夏の参院選で政界再編がささやかれるだけに、本当に採用を半減できるのか疑問も多いようだ。ある予備校関係者は、こう漏らす。

「受験者は、大ナタを振るえるほどの政治力があるのか、と半信半疑になっています。だから、『今後どうなるか分からないので、よく見ていく必要がある』と励ましているんですよ」