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弱いはずの「円」急上昇 ドル・ユーロがもっと弱いだけ?

   「円」が急上昇している。2010年5月21日の東京外国為替市場で円はドルやユーロに対して上昇。前日の米ニューヨーク株式市場の株価下落を受けて、対ドルは21日午前に1ドル89円台後半を付けた。東京市場で90円を突破するのは約2か月ぶりのこと。対ユーロでも円は一時、1ユーロ112円台前半と前日の終値に比べて1円以上上昇した。

   このところ高値圏で推移していた豪ドルも下落。また、上昇基調にあった原油や金、プラチナなども下落に転じており、投資マネーが「円」に流れ込んできている。

株価は年初来安値9784円

   東京株式市場の株価下落は、米株式市場が下げた影響と、円高になって自動車や電機などの輸出関連株が大きく下落するのがパターン。つまり、株安の元凶に「円高」は付きものだ。

   2010年5月21日の日経平均株価の終値は前日比245円79銭安の9784円54銭で、年初来安値を更新。1万1000円台だった4月30日から、1か月も経たないうちに1200円超も急落した。

   株式市場の混乱は世界的に広がっていて、アジアでも韓国やシンガポール、台湾、香港など、21日は中国・上海を除いて軒並み下落した。

   その原因となった外国為替相場は、ドルもユーロも売りが優勢で、買われているのは円だけの状況。東京市場では1ドル87~90円で推移。ユーロは、ニューヨーク市場で8年半ぶりの高値となる1ユーロ109円台まで上昇したが、東京も1ユーロ112円台前半の高値水準で推移した。

   ギリシャの財政危機に端を発した欧州の経済不安によってユーロ円は、今年に入ってから20円超も下落した。国際通貨基金(IMF)などがギリシャ支援を打ち出し、いったんは収まったかにみえたが、ドイツの金融規制の強化が表面化したことで欧州連合の足並みの悪さが浮き彫りになって、「ユーロ不信」はさらに広がった。

本当に強い通貨は「中国元」

   第一生命経済研究所の主席エコノミスト嶌峰義清氏は「『円高』というからイメージとの乖離が出てくるのであって、『ドル安』『ユーロ安』と評したほうがいいでしょう」と、為替相場の現状をそう話す。

   米国での株価下落は、「発表された経済指標が思いのほか弱かったことで嫌気がさしたことがある。欧州のようすも含めて、不透明だからリスクの高い株を手放したり、益出ししたりしている」と説明する。

   欧州の財政不安に、米経済指標の悪さと心理的に後ろ向きなことが重なったところがある。いまの円高は少々行き過ぎのようでもある。

   嶌峰氏は、「本来、国の力が通貨の力と考えれば、中国元はかなり強いはず」という。中国は世界最大の経常黒字国であり、実質GDP成長率の高さをみれば明らか。内需拡大も持続的だ。欧米景気に悪化の懸念が生じても、中国が相対的に高い成長を保ってくれるという期待もあって、「人民元の独歩高になってもおかしくない」という。

   中国元といえば、「切り上げ」が話題で、エコノミストの一部には「欧州の財政問題が片付いたら、中国の元切り上げが待っている」との見方もある。

   嶌峰氏は「中国の内需がさらに高まり、インフレ圧力が著しく高まれば、切り上げも考えられる」とみている。