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絶好調「餃子の王将」成功の秘訣 ファミレスにない「出来立て」「手作り感」

   中華料理レストランチェーン「餃子の王将」を運営する王将フードサービス(本社・京都市)が、デフレをものともしない好調な決算を続けている。同社が2010年5月14日発表した2010年3月期決算は、売上高が前期比22.4%増の672億円、経常利益が同76.5%増の109億円となり、9年連続で過去最高益を更新した。

   売上高は7年連続の増収、最終利益は同53.2%増の49億円で、こちらも5年連続の最高益更新となった。快進撃の秘密は、ファミリーレストランとは一線を画す独自のメニューや調理方法、徹底した品質管理などにあるようだ。

ここ10年ほどで料理の味も店内の雰囲気も格段に向上

   大阪証券取引所で行われた決算発表会見には、王将フードサービスの鈴木和久専務取締役・経営企画部長らが出席。経営陣は外食産業を取り巻く環境について「節約志向などから『内食』に回帰する消費者が増加し、顧客確保のためのサービスの差別化、低価格の競争が激化している」と分析。王将については「『オープンキッチン』による活気と手作り感、店舗ごとのオリジナルメニューの提供など当社の強みが発揮され、料理の質や接客サービス、店の清潔感などが向上し、新たな顧客価値創出を図ることができた」と胸を張った。

   しかし、裏を返せば、かつての王将は料理の質や接客サービスが十分でなかったことを意味する。近年の王将の躍進は、これらの大幅な改善によるところが大きい。

   王将は1969年に京都で生まれた中華料理チェーンで、現在は全国で552店舗(10年4月末現在)を展開する。昔からボリューム感があり、割安な料理で知られていたが、かつては味がイマイチだったり、薄汚れた店が散見されたりした。しかし、ここ10年ほどで料理の味も店内の雰囲気も格段に向上した。これは、王将の増収増益とリンクする。

店ごとに創意工夫に富むオリジナルメニュー

   王将の全国の店舗の売り上げは、本社の担当者が毎日管理する。売り上げが落ち込む店舗については本社が原因究明に当たり、料理の味付けから店舗運営まで徹底して改善に取り組む。この結果、料理の質やサービスの店舗間格差がなくなり、全体的な底上げにつながった。さらに、各店の店長にある程度の裁量権を持たせているため、店ごとに創意工夫に富むオリジナルメニューがあるのも、ファミレスにはない王将の魅力となっている。

   前出の「オープンキッチン」とは、客席から調理の様子が見える店内の厨房のことだ。ファミリーレストランが工場で一括して調理した料理を冷凍し、各店舗では温めるなど最小限の手間をかけるだけにしているケースが多いのに対して、王将は食材などを本社が一括購入するものの、各店舗で料理人が材料を刻み、その場で調理する方法をとっている。王将はファミレスにはない出来立てや手作り感を「売り」にしているのだ。

   王将はバブル期の不動産投資がかさみ、2002年には創業以来、初の赤字に転落したが、00年に就任した現在の大東(おおひがし)隆行社長が「オープンキッチン」をファミレスにはない王将の魅力と位置づけ、経営改善に取り組んだ。王将も一時はファミレスと同様、工場で調理し、店内で温める「クローズトキッチン」の導入を進めたが、大東社長が中華料理店の原点である「オープンキッチン」に戻したという。ギョーザを焼いたり、チャーハンを炒めたりする音が厨房から聞こえるオープンキッチンはファミレスとの差別化につながり、今日の王将の躍進に結びついた、といえる。