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十勝毎日、北日本「ウェブ版有料化」「地域に特化」で読者獲得目指す

   北海道の十勝毎日新聞社が、有料のニュースサイトを立ち上げた。記事が閲覧できるのは、購読料を支払った会員のみとなる。

   日本経済新聞社や北日本新聞社もすでに有料の電子版をスタートさせており、記事への課金を収益モデルとして育てようという試みが徐々に広がってきた形だ。

地域ニュースに特化「他メディアで代替できない」

十勝毎日新聞の有料版サイト(写真提供:十勝毎日新聞)
十勝毎日新聞の有料版サイト(写真提供:十勝毎日新聞)

   十勝毎日新聞社(帯広市)が2010年7月1日に開設した有料版サイトでは、月額2500円で速報ニュースや、一部通信社の配信記事などを除く当日の新聞紙面を閲覧できる。過去記事の検索や、動画ニュースも配信するという。同社は「WEB TOKACHI」という無料サイトを運営しているが、掲載している記事は3本のみ。中身は十勝地方の観光やイベント、不動産情報などで、ポータルサイトに近い。元々「無料で記事は出さない」という方針だったためだ。

   同社メディア局に聞くと、有料サイト開設の背景には、広告収入の落ち込みが影響したようだ。新聞の購読数は約8万8000部で微増ではあるが、今後大幅な成長は期待できない。一方で今年の広告収入は、前年比5%マイナスを見込んでいるという。紙媒体が苦戦する中、「ニュースという『資源』を使って、ウェブで課金するモデルを作れないか」と検討し、有料サイトを始めた。

   読者の多い十勝管内は広大で、一部新聞を宅配できない地域がある。その場合は郵送で翌日配達にならざるをえない。「ウェブであれば場所に関係なく、読者に早くニュースを届けられる」ことが有料化サイトの「ウリ」になると、メディア局の担当者は話す。もともと十勝毎日は地域ニュースに特化しており、「他のメディアでは代替できない」のも強みだ。例えば農業関連のニュースを充実させ、きめ細かく地域をカバーすることで、「有料サイトでないと情報が得られない」となれば購読数も増やせるのではないかと、同局では期待を寄せる。

日刊自動車新聞も「電子新聞」開始

   有料版ニュースサイトはほかにもある。日本経済新聞社が10年3月にスタートした「電子版」は、朝刊と夕刊の最終版に加え、独自のニュースや解説記事を配信し、携帯電話でも閲覧可能とした。月額4000円、新聞購読者でもプラス1000円かかるが、サイト開設1か月で有料の登録会員は6万人を突破している。また北日本新聞社(富山市)は、1月に有料版を立ち上げた。全国や海外ニュースは無料にする一方、富山の地域ニュースの閲覧には会員登録が必要だ。月額2100円だが、新聞の購読者は会費を払う必要はない。日刊自動車新聞社は、ウェブサイト上で、テキストの記事を閲覧したり、「電子新聞」の形式でサイト上に掲載された紙面を読んだりできる。

   ウェブサイトではないが、デイリースポーツは、紙面を画像データに変換し、パソコンで読めるように有料で提供する。産経新聞社は、多機能情報端末「アイパッド(iPad)」向けの専用アプリケーションを開発。月額1500円で毎朝最終版の紙面データを配信する。

   徐々に広がる「有料化」だが、海外では「失敗例」も見られる。米ニューヨーク州の地方紙「ニューズデー」は、09年10月にウェブサイトを有料化して週5ドルの購読料の支払いを読者に求めた。複数の報道によると、3か月後に獲得できた新規購読者数はわずか35人と、惨めな結果となった。

   パソコン、スマートフォン、電子書籍端末と「媒体」は多様化してきたが、だからと言って安易に記事有料化しても、目の肥えた読者はついてこない。内容によっては、無料で手に入るニュースはネット上にいくらでも転がっているからだ。「ここでしか読めない記事」という特色を出すことがポイントのようだ。