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菅内閣ですっかり熱が冷めた 地球温暖化対策の取り組み

   1年前の政権交代で盛り上がった地球温暖化対策への意欲が急速にしぼんでいる。1990年比25%削減を打ち出した鳩山由紀夫前内閣と打って変わり、菅直人内閣では、この問題に関する発言も少なく、「地球温暖化対策基本法」の制定の見通しもまったくたっていない。

   鳩山氏が国連の気候変動サミットで「2020年に日本の温室効果ガス排出量を90年比25%削減」と公約したのが2009年9月22日。全主要国の参加による意欲的目標への合意が前提としたが、世界から高い評価を得たのは間違いない。

「国策」として本格的に取り組むはずだった

   温室効果ガス削減の手法は「環境税」「排出量取引」「自然エネルギー拡大」の3本が柱だ。

   鳩山内閣は、09年末の10年度税制改正決定過程で、ガソリン税の暫定税率維持を決めた際、環境税への移行の方向を打ち出した。

   排出権取引については、3月に閣議決定した温暖化対策基本法案に盛り込んだ。産業界(経済産業省)と「環境族」の岡田克也外相率いる外務省などが対立し、企業に排出総量の上限目標を設定してその過不足分を取引する「キャップ・アンド・トレード(C&T)方式」の総量規制と、産業界などが求めた「原単位方式(生産量当たりの排出量規制)」の両論併記になり、今後、詰めることになったが、法案明記は画期的なことだった。

   自然エネルギーでも、「再生可能エネルギー全量買い取り制度」を同法案に盛り込んだ。

   具体的な中身には様々な議論を残しつつも、大きな方向として温室効果ガス削減への本格的な取り組みを「国策」として打ち出したもの。90年比実質8%減とする対案を示すにとどまる自民党などとの違いは明白だ。

   ところが、鳩山内閣が退陣して通常国会で温暖化対策基本法案は廃案に。さらに参院選での民主党大敗で状況は一変。鳩山時代に計8回開かれた温暖化問題に関する閣僚委員会は、菅内閣では一度も開かれず、8月上旬に開かれた民主党の環境部門会議(座長・山花郁夫衆院議員)では基本法案の扱いに発言が相次ぎ、「再提出した場合、修正はありえるのか」といった質問も出たが、「誰も答えを持ち合わせていなかった」(関係筋)という。環境省、経産省、外務省などからも「菅首相の意向が分からない」「仙谷由人官房長官から何の指示もない」との声も聞こえる。

米倉経団連会長が公式に反対表明

   実務的な作業はそれなりに進んでいる。経産省は2010年7月下旬、再生可能エネルギーの全量買い取り制度に関する具体案を示し、有識者会合などで議論されている。同案は買い取り費用を賄うための一般家庭の月額の負担増を10年後で150~200円としているが、「太陽光パネルを設置した人は余った電力を買い取ってもらえるが、設置できない賃貸世帯など負担が『弱者』にのしかかる」(電力業界関係者)という根本的な問題がある。産業界も、「大規模工場では年間の負担が1000万円単位で増える」として反発、「経団連としては反対」と米倉弘昌経団連会長が公式に表明する(7月26日の会見)など、前途は多難だ。

   民主党内には「環境は民主党らしさを示せる政策分野」(政調幹部)との思いも強く、国際合意など前提条件なしの25%削減を公約している公明党との連携を探る向きもある。

   国際交渉も停滞する中、民主党政権がどう次の一手を繰り出すか。9月14日の代表選に大きく左右されるのは間違いない。