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初のペイオフ約120億円が対象 経営陣逮捕でも解約進まない不思議

   日本振興銀行が経営破たんした。2005年4月にペイオフが本格解禁されて以降、初の破たんで、「1000万円超とその利息」を超えた預金は保護の対象外になる。2010年9月10日朝、金融庁が業務停止命令を発動し、12日までは預金を解約(払い出し)することができない、「預金封鎖」の状態にある。

   賢明な預金者であれば、2010年3月期決算で赤字を計上したうえに旧経営陣が銀行法違反で逮捕されるなど、経営不安が取沙汰されている銀行に、1000万円を超える預金を置いておくことはしないだろうと思われるが、約120億円もの預金が預金者の手元に戻らないという。

定期預金で集めた総額5859億円

日本振興銀行のHP
日本振興銀行のHP

   日本振興銀行で取り扱っている預金は、定期預金だけだ。預け入れは、インターネットか、預金者が他の銀行から振興銀行宛に振り込む。反対に、預金が満期を迎えると銀行側が預金者に元本とその利息を振り込む仕組みだ。

   振興銀行の預金残高は、8月末時点で5859億円。預金者数は11万3000人いる。1000万円超の預金者は3560人、預金残高で471億円となり、このうち元本1000万円とその利息分を超える金額は約120億円とされる。

   預金残高は3月末に比べて、73億円減っていた。ある地方銀行の幹部は、「そんな程度の資金流出で済んだのか」と驚く。検査忌避などの法令違反で金融庁が一部業務停止命令を発出したのが5月、この問題で旧経営陣の逮捕されたのが7月だったことを考えても、「もう少し多くてもおかしくないのでは」と首を傾げる。

   振興銀行は、中小企業や個人が資金決済に使う当座預金や普通預金をもっていないため、中小企業の資金繰りなどへの影響は少ない。また市場からの資金調達もなく、外部との接触があまりなかった。そのことが、結果的にペイオフをやりやすくしたとされる。ただ、定期預金は解約しないと期日が到来するまで資金を引き出せない。振興銀行の場合、「預金者が解約まではしなかったのではないか」との見方もある。

不動産や株式投資で大儲けた人が多い?

   預金1000万円を超えていても、融資のある人は相殺することができるし、急ぎで資金が必要であれば、一定のカット率に基づく「概算払い」が受け取れる。1000万円を超える部分が100万円の場合、予想カット率が20%であれば20万円が受け取れる。正式なカット率は約1年後に決まり、そのときに改めて差額を清算する仕組みだ。

   ペイオフ解禁前に金融機関が相次いで経営破たんしたとき、金融管財人として破たんした信用組合に派遣された金融関係者によると、「その時のカット率で20%程度だった」という。

   とはいえ、「高金利」という魅力に引きつけられた預金者、なかでも1100万円以上の預金者は、日本振興銀行に1233人いるという。

   預金者の中には、退職金を預けたり、マンション購入の資金を貯めていたり、また事業資金の積み立てと、「虎の子」を預けていた人はいる。

   その一方で、「2000万円、3000万円と預ける人は不動産売買だったり、株式投資だったりで大儲けた人が少なくないんです。比較的高齢者が多いのですが、老後の資金を心配するような人たちではありません」(前出の金融関係者)とのこと。事業に成功した中小企業のオーナー経営者も少なくないのではないか、とみている。