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中央三井と住友信託が統合 「相思相愛」でも「行風全然違う」

   中央三井トラスト・ホールディングスと住友信託銀行が、2011年4月に予定する経営統合に最終合意した。信託財産残高や企業年金受託などで三菱UFJ信託銀行を抜き、信託業界トップのグループが誕生するが、それぞれが抱える経営課題はいまだ解決していない。

   両行はこれまで何度も統合話が浮いては消えた間柄。2008年秋のリーマン・ショックによる経営環境の激変が引き金になり、ようやく09年11月、経営統合の基本合意にこぎつけ、「長すぎた春」を実らせた。

中央三井は公的資金返済のめど立たず

   その間、傘下に信託銀行を持たない三井住友フィナンシャルグループ(FG)が両行に秋波を送り続けていたが、逆に「メガバンクにのみ込まれたくない」という両行の警戒心をあおり、統合を後押しする結果になった。

   信託銀行は資産規模が大きいほど運用益が増えるうえ、財産管理などに高度なシステムが必要でコストがかさむため、統合による「規模のメリット」が働きやすいとされる。両行は8月24日に最終合意を発表した際に明らかにした計画で、2016年3月期の最終利益を2011年3月期の予想利益に比べて約8割増の約2200億円とぶち上げた。住友信託の常陰均社長は会見で「メガバンクとは一線を画す」と述べ、メガ信託として独立路線を選んだことに自信を見せた。

   だが、華々しい統合には難問も立ちはだかる。中央三井は、1999年に投入された公的資金約2000億円の返済のめどが立っていない。国民負担が生じないよう、株価が簿価である400円を上回ることが返済の条件だが、株式市場の低迷も相まって、このところは300円前後にとどまり、ハードルは高いままだ。中央三井の田辺和夫社長は8月24日の会見で「株価が上がらないと返済は困難」と、見通しの暗さを認めた。

住友信託は個人向け事業の強化急務

   一方、ノンバンク買収や不動産事業など多角化に走り、リーマン・ショックで大損失を被った住友信託は、個人向け事業の強化が急がれる。メガバンク傘下のライバル信託銀行は、グループの商業銀行や証券会社が持つ巨大な顧客基盤を生かして富裕層に攻勢をかけており、勝ち抜くのは容易ではない。

   年金などの運用についても、あるライバル信託の幹部は「年金基金などの顧客は統合に伴い住友信託・中央三井連合との取引が多くなりすぎることを嫌がり、シェア調整に動く。むしろチャンスだ」と意気込む。

   新持ち株会社「三井住友トラスト・ホールディングス」社長には中央三井の田辺社長、会長には住友信託の常陰社長が就くことも決定。2012年4月には、新持ち株会社傘下の3銀行が統合し、三井住友信託銀行となる。統合作業に携わる行員からは「『相思相愛』と言われてきたが、行風が全然違う」とのぼやきも聞こえ始めており、山積する課題を共に乗り越えて相乗効果を発揮できるのか、注目される。