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「日本が沖縄を不法占拠」?  ますます過激、中国マスコミ

   尖閣諸島付近の日本領海で海上保安庁の巡視船と中国漁船が衝突した事件で、中国側が異例の強硬姿勢に出ている。逮捕された中国人船長(41)の10日間の拘置延長が決まったことを受けての措置で、影響は民間交流にも及んでいる。中国マスコミの論調も激しさを増しており、大手紙には「沖縄は日本が不法占拠している」とする荒唐無稽な論文まで掲載されている。

SMAPコンサート延期も正式発表

   2010年9月7日の事件発生から2週間がたつが、中国側の対応は強硬さを増すばかりだ。これまでに、中国側は(1)日中間の閣僚級以上の交流の停止(2)東シナ海のガス田共同開発についての交渉の延期(3)日中航空路線の増便についての交渉の中止、といった対抗策を打ち出しているが、9月20日には、21日から派遣予定だった「日本青年上海万博訪問団」の受け入れを延期することを通達。9月21日には、SMAPが所属するジャニーズ事務所が、「昨今の状況をみて、お客様の安全の確保を考慮して」10月9日と10日に上海で予定されていたコンサートを延期すると発表するなど、事件は民間レベルの交流にも影響している。

   これに対応するかのように、中国マスコミの論調も、激しさを増している。最もこの傾向が顕著なのが、中国共産党系のタブロイド紙「環球時報」だ。部数は約200万部あるとされる。

   同紙は、9月13日の時点で、社説で「日本は危険な先例をつくろうと企んでいる」と題して、「この状況を尖閣諸島の支配を正当化するための法的先例として利用しようとしている」と主張。14日の社説では、「日本にさらなる対抗措置を」と題して、

「日本は、今回の行動で、どれだけ大きなものを失うかを理解していないのかも知れない」
「日本製品の輸入がわずかに減少するだけでも、(日本の)長く低迷する経済には大きな打撃になるだろう」

と、不買運動や経済制裁の可能性を示唆してすらいる。

「琉球の独立を支援すべきだ」

   9月19日には、

「日本には中国と釣魚島(尖閣諸島)について話し合う資格はない」

と題した文章を掲載。文章を寄稿した唐淳風氏は、在日本中国大使館で勤務した経験もある、商務部の日本問題の専門家だとされるが、その内容は

「琉球国民の大部分が福建省、浙江省、台湾沿岸の住民だった。祖国の大陸と血筋が繋がっているだけではなく、言語・文字はすべて中国語で、法令制度も大陸朝廷のものと完全に一致している」
「米国の(沖縄を日本に返還する)決定を覆すことができなかったため、数万人の琉球住民が広場に集まって号泣、日本の侵略者を追い払おうと誓った。30年来、日本を追い払って独立を勝ち取ろうとする戦いが停止されたことはない」

といった荒唐無稽なものだ。この荒唐無稽な前提をもとに、寄稿では、日本の琉球支配には全く合法性がないとした上で、

「唯一の合法性を得る手段は、(日本が)中国政府と交渉して、中国が琉球問題に関する協議で調印すること」

と結論を導き出している。要は「沖縄を不法占拠している日本に、尖閣諸島について議論する資格はない」という趣旨のようだが、記事のコメント欄には、

「琉球の独立を支援すべきだ」
「琉球の自治を支持する!日本の軍国主義を離れろ!」
「その場限りでの解決などせずに、海上で日本と開戦してでも尖閣諸島を奪回すべきだ」

と、賛同する声が多い。

   9月20日付けの紙面では「次に日本にどう対抗するか」と題して特集を掲載。軍事戦略専門家が、尖閣諸島の海域での軍事訓練を行うことを提唱するなど、主張はますます過激化している。