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不況のラスベガス覆う悪夢 「ネットカジノ」合法化法案提出

   カジノで有名な米国屈指の観光地ラスベガスが、「ネットカジノ合法化」に揺れている。既に法案が提出され、議会で承認される可能性もある。

   現在は違法であるネットギャンブルが法律的に認められれば、カジノ施設を多数抱え観光の柱となっているラスベガスにとっては大きな痛手。ただでさえ疲弊している経済に大きな打撃を与えることになる。

合法化で400億ドルの税収増に貢献

ネットカジノ合法化で店舗が消える?
ネットカジノ合法化で店舗が消える?

   インターネット上でスロットマシンやカードゲームなどの賭け事ができるサイトは、検索すると数多く見つかる。米国は、ラスベガスのようにギャンブル施設が認められている一方、ネットカジノは2006年に法律で禁じられた。

   だが2010年になって、これを合法化するための法案が議会で検討されているという。米ニューヨークタイムズ(NYT)紙によると、大手リゾート企業数社が中心となって、一部の遊戯がネットでも認められるように後押ししたようだ。7月28日の下院金融サービス委員会で法案は通過。上下両院での審議を待つ。

   ネットカジノが全面的に認められれば、カジノ施設を運営する企業の収入に影響する。そのため、ある専門家は、実店舗の収益を害する恐れの少ないポーカーだけが合法になるのではないか、と見ているようだ。議会の課税合同委員会の試算では、法制化により今後10年間で400億ドル以上の税収増が見込まれると米ウォールストリートジャーナルは書いている。

   業界の中には、自らネットカジノを運営して、店舗運営とともに収益の柱を増やそうと考える企業もあるようだ。全米ゲーム協会(AGA)によると、2009年、米国外でネットカジノを運営する企業が米国在住者から得た収益は54億ドルと推計。「違法状態」でこの金額に上るのだから、合法となれば米国内でネット事業を営むケースが増え、愛好者はカジノ施設に行くのをやめてオンラインに走る可能性もある。全米の店舗型カジノの売り上げは2008、09年と2年続けて減少した。ネット合法化となれば、さらに落ち込みを加速するかもしれない。

ホームレスが溢れ、コンドミニアムは95%空室

   そうなれば、ラスベガスのようにカジノ産業で成り立っている都市には一大事だ。単にギャンブルの収入が減るだけではない。宿泊施設から飲食店、エンターティンメント事業と、カジノを核としたさまざまなビジネスを直撃し、そこで働く人々の雇用を奪う恐れも出てくる。

   それでなくてもラスベガスは、サブプライム問題と、それに続く2008年の「リーマンショック」後の不況の波から立ち直れないままだ。10月2日付けのNYTによれば、失業率は14.7%に達し、米国全体の数字を大きく上回っている。ラスベガス中心部にあるプラザホテルアンドカジノでは、400人が一時解雇を言い渡された模様だ。

   オンラインメディア「ビジネスインサイダー」では、ラスベガスを「全米を覆う不況の悪夢の縮図」と表現。「ホームレスが溢れ、コンドミニアムは95%が空室。通りも寂しい状態で、街が復活する見込みはまるでない」との読者の投稿を紹介している。

   瀕死ともいえる現状に、さらにカジノ施設への客足をとめるような法律ができれば、「とどめ」にもなりかねない。合法化に反対するカジノ施設も多く、また11月の中間選挙で共和党が勝利した場合、民主党議員が出したこの法案が議会を通過するかは微妙だが、政府にとっても税収増を見込めるだけに、否決されても復活することもありうる。