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イラク、スーダン通貨の投資話 トラブル続出すでに被害10億円超

   イラク通貨やスーダン通貨といった、あまりなじみがなく、換金性の乏しい外貨への投資を呼びかける「問題取引」が続出している。主に高齢者や、過去に未公開株などの投資でトラブルにあった人を狙ったものだが、国民生活センターには2010年10月21日現在で、405件の相談が寄せられている。

   「いま買っておけば、将来必ず儲かる」「希望すれば、いつでも両替可能」と説明されて外貨を購入したものの、その後業者と連絡がとれなくなったり、両替(換金)できなくなるなど、被害金額は10億円を超えた。

最高2000万円を騙し取られた人もいる

   80歳のある男性に、「イラクディナールを持っていれば、買値の40倍で買い取る」とA社から電話があった。その後、B社から「手軽にハイリターンが期待できる」とイラクディナールの購入を勧めるダイレクトメールが届き、その男性はA社への転売を考え、B社から2万5000ディナール札を1枚10万円で4枚購入した。「劇場型」といわれる騙しの手口だが、男性の手元には「買値の40倍、1600万円」は届かなかった。

   また、60歳代の女性のケースは、「スーダンポンドを高値で買う」というものだった。この女性は、銀行で購入金を振り込もうとした際に事情を聞かれ、「あやしい」と止められたため、未遂で済んだ。

   今こういった、あまりなじみのない外貨への投資を持ちかける金融業者とのトラブルが急増している。

   そもそも、日本の銀行ではイラクディナールもスーダンポンドも、円に換金することはむずかしい。換金できたとしても、現在2万5000イラクディナールは2000円弱に過ぎないから、それを1枚10万円で販売する業者は「丸儲け」なのだ。

   購入した人のもとに外貨が届かなかったり、「いつでも両替可能」とセールスしていながら、両替(換金)を申し出ても断わられたり、最悪の事態は業者との連絡が取れなくなっていたりしている。

   国民生活センターに寄せられた相談件数は、4月には20件だったが、7月に112件、8月には100件に上った。被害金額は10億7219万円(10月22日現在)になる。1件あたり、最高2000万円を騙し取られた人もいるそうだ。

背景に円高?「為替への関心が高まった」

   今回の「外貨トラブル」の特徴には、未公開株でトラブルにあった人が少なくないことがある。あるFX業者は、「投資への関心が高い人たちであることは間違いなく、さらに最近の円高で為替への関心が高まったことがあるのではないか」と推測する。

   未公開株で損した分を為替で取り戻そうと、「欲を出した」こともあるかもしれない。

   国民生活センターは、業者の巧みなセールストークに消費者が騙されたとみている。あるケースでは、「イラクから米軍が撤退すれば、イラクディナールの価値は20~30倍に上昇する。いま、イラクディナールを買っておけば、将来円に両替したときに数十倍になる」と説明されたという。

   「イラク復興を持ち出すことで、消費者が本当にそうなるかもしれないと思い込んでしまうんです。消費者がそのことを確認しづらい情報を言葉巧みに盛り込んで勧誘するのが手口です」と、国民生活センターはみている。

   いまのところ、被害者が騙された外貨はイラクディナールとスーダンポンドだけだが、他国の通貨でもあまり知られていないようであれば、注意するに越したことはない。