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米市場でトヨタ「独り負け」 品質・安全性への懸念続く

   「リーマンショック」から2年がたち、米国の消費者の財布のひももゆるみつつあるようだ。その一例として挙げられるのが新車販売台数で、前年同月比で13%も増加している。米国、日本、韓国メーカーの大半が順調に販売台数を伸ばすなか、唯一台数を減らしたのがトヨタで、「独り負け」状態だ。どうしてなのか。

   米調査会社のオートデータのまとめによると、10月の新車販売台数は、前年同月比13.4%増の95万165台。年率換算では1226万台で、「リーマンショック」前の水準(09年9月、年率1250万台)に近づきつつある。

現代、ホンダ、日産が伸ばす中でトヨタはマイナス

プリウスのリコールが尾を引いている?
プリウスのリコールが尾を引いている?

   前年同月と比べると、クライスラーは37%、ゼネラル・モータース(GM)は4.2%、フォードは19.3%の伸びを記録。米国内での消費回復を裏付けていると言えそうだ。輸入車も好調で、韓国の現代自動車は38%も伸びを示している。日本勢も好調で、ホンダは、前年同月比15.6%増の9万8811台。日産は同16.1%増の6万9773台を販売している。

   だが、トヨタは、同4.4%減の14万5474台。米国で車を販売している上位6社のうち、前年割れをしたのはトヨタだけ。まさに「独り負け」状態だ。

   この背景として指摘されているのが「小型トラック」の伸びだ。小型トラックの販売台数は23.5%伸びているが、トヨタが強い「乗用車」の伸びは4%にとどまっている。このため、小型トラックに需要を奪われたとの指摘がある。

「リコール問題が尾を引いて消費者が慎重に」

   また、「クリーン・カー・ウォーズ」(中央公論新社)などの著書がある経済ジャーナリストの長谷川洋三さんは、

「リコール問題が尾を引いて消費者が慎重になっているのでは」

とも指摘する。09年末から10年初めにかけて、フロアマット、アクセルペダル、プリウスのブレーキの不具合などが続々と判明。リコールや自主改修の対象は、全世界で1000万台にも及んだ。10月下旬にも、ブレーキの不具合で米国内だけで74万台を対象にリコールを発表したばかりだ。

   価格比較サイト「TrueCar.com」の副代表は、地元紙「デトロイト・ニュース」に対して、今回のリコールが、過去のものになりつつあったトヨタ製品への品質・安全性に対する懸念を再燃させる結果になったと指摘。

「今回のリコールの規模は大きくはないが、ほとんどの消費者は(リコールを報じるニュースの)見出しを見るだけだ」

と、トヨタに対する消費者のイメージが再び悪くなったとの見方を示している。

   それ以外にも、前出の長谷川さんは、

「今では、トヨタの主戦場は『新興市場』。米国では『押し込み販売』を、あまりやらなくなった」

と、米国内では販売奨励金の額を減らすなど、大規模リコール以降は販売促進活動を抑えた結果が現れている可能性も指摘している。