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HV人気衰えぬトヨタ EVにどこまで本気なのか

   トヨタ自動車が電気自動車(EV)の生産・販売に本格参入する意向を示した。トヨタは2010年11月18日、2012年に米国市場に加え、日本と欧州にも「iQ」ベースのEVを導入すると発表。当面は年間数千台規模の販売を目指す。

   同日朝(日本時間)には米テスラモーターズと共同開発した「RAV4 EV」をロサンゼルスオートショーで公開。いよいよトヨタのEV戦略が明らかになってきた。果たしてトヨタは、EVとどこまで本気で向き合うのか。

他社のEVよりも低価格で販売

「RAV4 EV」
「RAV4 EV」

   トヨタが公開したiQベースのEVは、航続可能距離を三菱自動車「i-MiEV(アイ・ミーブ)」や日産自動車「リーフ」より約50km少ない105kmとした。これにより車両価格は「他社がすでに発表しているEVよりも安くなる」(内山田竹志副社長)見込み。トヨタは「航続可能距離と車両価格をある程度割り切った」(同)形でEV販売に乗り出し、各国での普及に弾みをつける狙いだ。

   ただ、今後グローバルで合計11モデルの新型ハイブリッド車(HV)と「本命」であるプラグインハイブリッド車を投入するトヨタとしては「EVは車を複数所有できるお客さまに『2台目としていかがですか』と、お勧めするにとどまる」(トヨタ関係者)というのが本音。特に国内では「エコカー補助金の反動はほとんど関係ない。黙っていてもまだまだ売れる」(トヨタ系列ディーラー)というHVの拡販が最優先になる。

   それでは、トヨタがこのタイミングでEV戦略を発表した真意はどこにあるのか。

   もちろん、12月に予定されている日産・リーフの市販に合わせ込んだことは間違いない。しかし、トヨタが発信した「EV販売参入」のメッセージは、一般消費者以上に系列ディーラーを含むトヨタグループ内に向けられている。

「トヨタグループ内にはEVで出遅れたとの焦りがある」

   日本のエコブームはとどまるところを知らず、これが近くEVブームに火をつける可能性も少なくない。いち早くEVを市販化した三菱自動車、リーフの目標販売台数を発売前に予約で埋めた日産自動車を前に「トヨタグループ内にはEVで出遅れたとの焦りがある」(トヨタ子会社関係者)ことは否めない。実際に販売現場では「トヨタはEVを出さないのか、と尋ねてくるお客さまが増えてきた」(トヨタ系列ディーラー)との声が聞こえ始めている。

   今回の発表は、まずグループ内の焦燥感を鎮静する意味合いが大きい。「EVのような全く新しい商品は、市場投入以降のお客様の反応次第でその後の見通しが決まる」と内山田副社長が話すように、現状のトヨタEvの将来性は未知数。トヨタが初代「プリウス」を発売した1997年当時、ここまでHVが新車市場を席巻する存在になることを予見した者は少ない。HVと同じように、今後トヨタのEVが大化けする可能性は十分にあり得る。ただ、トヨタのEV生産・販売に対する本気度は、HVでトヨタに市場の主導権を握られた他メーカーよりも圧倒的に低いことは確かだ。