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米国冬商戦で3Dテレビ「惨敗」 日本でも主役はスマートフォン

   3D(3次元)テレビが伸び悩んでいる。2010年初めには「3D元年」とうたわれ、国内メーカーは続々と製品開発に乗り出したものの、製品が高額な一方で3Dを楽しめるテレビ番組が少ないことに加えて、視聴の際に専用メガネが必要なことも足を引っ張っている。

   米国では、クリスマス商戦で3Dテレビ販売が「惨敗した」と報じられたほど。国内でも年末商戦の主役はスマートフォンに奪われた格好だ。

米国では4割、5割引で「在庫処分」

本格普及には時間がかかりそう
本格普及には時間がかかりそう
「2010年の3Dテレビの市場は、当初予測したより成長率が低いと見られる」

   調査会社のディスプレイサーチは2010年10月12日、このようなリポートを発表した。近い将来に市場は大きく拡大すると予想するが、2010年の3Dテレビの出荷台数予測は、全薄型テレビの2%にとどまるとしている。

   一方、日本市場についても、ソニーの吉岡浩副社長が12月20日、記者発表の席で「3Dテレビは10月までは思ったほど伸びなかった」と発言。11月以降の販売の上昇を強調したが、通期計画には届かないと考えているようだ。

   米国では、11月下旬の感謝祭以降の「クリスマス商戦」で、3Dテレビが不振だと伝えられた。米ウォールストリートジャーナルの12月20日のビデオリポートによると、セールの終盤にあたるこの時期には、2010年初頭と比べて価格が4~5割安の商品が出るなど「投げ売り状態」。発売当初からメーカーが期待をかけすぎた半面、消費者が「3000ドルも出す価値があるのか」と買い控えに走ったことで売れ行きが低迷、そのため、在庫処分に走って大幅値下げにつながったとも見られる。リポートしたマルセロ・プリンス記者は、「まだ待ったほうがいい。クリスマス以降、価格はもっと下がる」と断言した。

   価格面では、国内でも下落傾向だ。調査会社BCNが11月に発表した、2010年4~10月の3Dテレビ平均単価を見ると、10月は19万1200円と初めて20万円を割った。とは言え、通常の薄型テレビも同様に値下がりしているため、両者を比較するとまだまだ割高感が残っているのが現状だ。

地上波テレビ局「番組作る必然性ない」

   購入に二の足を踏む理由として挙げられた「専用メガネ」は、改良の動きが出てきた。12月22日、東芝がメガネなしで3D映像を見られる液晶テレビを発売したのだ。ただしサイズは12型と20型と小型。3Dに期待される、「リビングで家族全員が迫力の映像を楽しむ」というわけにはいかないだろう。発売に際してツイッターでも、「12インチ12万円って、需要あるの?」「家庭用テレビとして普及させるには大画面化を実現しないとね」と、反応は今ひとつだった。

   コンテンツ不足は解消されていない。BSなどでは3D専門チャンネルが開設されたが、地上波では積極的に3D番組を流すまでには至っていないのが現状だ。ディスプレイサーチのアナリストで、テレビ市場担当バイスプレジデントの鳥居寿一氏に聞くと、「世界全体でも3Dテレビの出荷台数は300万台程度で、当然国内はもっと少ない。地上波のテレビ局は、わざわざその『少数派』のために3D専用番組を制作する必然性は現時点で感じないでしょう」と話す。裸眼の3Dテレビも、大型画面や低価格化が実現するには「しばらく時間がかかるでしょう」と見る。

   2010年1月に米ラスベガスで開かれたエレクトロニクス製品の国際見本市「CES」で3Dテレビが大評判となり、そのためメーカーが過剰なまでに期待をかけたこと、韓国メーカーが短期間で開発に乗り出し、国内メーカーが追従して「シェア獲得戦争」に巻き込まれてしまったこと、これが「3D元年」の実態だった模様だ。鳥居氏によると、価格的にも3Dテレビが本格普及するのは2012年以降で、その様子を見ながらテレビ局などもコンテンツの充実を図っていくという。ハードとソフトの両輪がそろうのは、かなり先のようだ。