J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

地方空港中心にLCC参入ラッシュ 及び腰日本の航空会社はどうなる
(連載「LCC革命の衝撃」第8回)

   東南アジアや欧米ではすっかり一般化した感もある格安航空会社(LCC)だが、日本国内に目を向けると、必ずしもまだ浸透度は高くないようだ。大手旅行社の調べによると、実際にLCCを利用したことがあるのはわずか5%だ。

   だがこの半年ほどで、日本路線の増便を表明するLCCが相次いでいるほか、全日空(ANA)がLCC参入を表明するなど、動きが活発化している。連載の最終回では、LCCをめぐる日本国内の動きを追った。

「LCC利用したことある」はまだ5%

中国・上海のLCC「春秋航空」は、高松空港への乗り入れが決まっている
中国・上海のLCC「春秋航空」は、高松空港への乗り入れが決まっている

   旅行大手のJTBが2010年11月にウェブサイト上で行ったアンケート(有効回答数: 1万0156)によると、「LCCについて知っていますか?」という問いに対して、「はい」と回答した割合が56%で、「聞いたことはあるが詳しくは知らない」と回答したのが26%。「いいえ」と答えたのは18%にとどまり、名前自体は浸透が進んでいる。

   その一方で、「LCCを利用したことがある」と回答したのは、まだ5%。実際に浸透しているとは言えない状態だ。「今後、LCCを利用してみたいですか?」との問いに対しても、「はい」が39%で、「いいえ」が13%。半数に近い48%が、「分からない」と回答した。まだまだ二の足を踏んでいる人が多いのが現状で、JTBでは、この背景を

「日本から就航しているLCCは少なく、利用者の声など、まだまだ情報が少ないことが考えられる」

と分析している。だが、この1年ほどで新規路線開設に向けた動きが相次いでおり、LCCに触れる機会は確実に増加しているのも事実だ。

   当連載でも取り上げたとおり、2010年12月には、マレーシアの「エア・アジアX」が、LCCとしては初めて羽田空港に乗り入れを果たしたほか、「上海-茨城が片道4000円」というキャッチフレーズが衝撃を与えた中国の春秋航空は、11年3月に高松空港にも乗り入れることが決まっている。さらに、佐賀、熊本空港に乗り入れる交渉も進んでいる。その佐賀空港では、10年12月末、韓国・大韓航空の子会社にあたるLCC「ジン・エアー」が、仁川空港と結ぶ定期チャーター路線を開設。地方空港を中心に、「参入ラッシュ」の様相だ。

関空-成田便や、関空-福岡便が片道5000円程度?

   国内の航空会社も、動きを活発化させている。ANAは10年9月、LCCに参入することを発表、11年度下期に国際線と国内線の運航を始める。関西空港を拠点に、関空-成田便や、関空-福岡便を片道5000円程度で運航するものとみられている。

   スカイマークも10年11月、14年度をめどに国際線に参入することを表明。仏エアバス社の超大型旅客機A380型機も最大6機導入することも発表した。さらに、西久保慎一社長が10年12月の記者会見では、現在17機保有している機体を、14年までに50機にまで増やしたい意向を明らかにしている。

   一方、会社更生手続き中の日本航空(JAL)は、

「(スカイマークなどのLCCの台頭は)大きな流れとしては、我々の主たるターゲットとしている部分とは重なりがうすい」(大西賢社長、10年12月28日の定例会見で)
「質のいい、ハイクオリティーな、プレミアムな輸送会社を目指したい」(稲盛和夫会長、10年10月20日の講演で)

と、LCC参入には否定的な見解を繰り返している。

   前出のJTBのアンケートでは、

「将来的に、就航路線の増加とともに利用者数も増えれば利用意向も高まると考えられる」

とも予測。LCCの需要が伸びるのはほぼ確実だが、既存キャリア(レガシーキャリア)との市場の競合が課題になりそうだ。