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三洋とシャープが特許で提訴合戦 日本のメーカー同士で「掟破り」

   三洋電機が2011年1月27日、液晶関連技術の特許侵害でシャープを東京地裁に提訴した。これには伏線がある。直前の25日に、同じく液晶をめぐる特許侵害で、シャープが三洋を米国際貿易委員会(ITC)に提訴していたのだ。

   シャープが三洋提訴の事実を対外的には明らかにしなかったのに対して、三洋はシャープ提訴を名指しで公表。電機業界では「三洋は今回の特許侵害で相当プライドを傷つけられ、反撃に出ざるを得なかったのではないか」と見られている。

日本の大手電機メーカー同士がお互いを訴えるのは珍しい

   日本の電機メーカーが特許侵害で韓国など海外メーカーを訴えるケースはよくあるが、日本の大手電機メーカー同士がお互いを訴えるのは珍しい。電機メーカーは特許開発でしのぎを削っており、特許のライセンス使用料は無視できない。今回の訴訟で両社は損害賠償額などを明らかにしていないが、相当な金額になる可能性もある。シャープは「訴状を見ていないので、今はコメントできない」と困惑の様子だ。

   三洋は現在、携帯電話や液晶テレビなどに使う液晶パネルを自ら開発・生産していないが、1990年代には手掛けており、数々の特許を取得している。今回、三洋が問題としたのは、「液晶表示を認識できる視野角の範囲を広げる技術と、表示品質を向上させる技術」の特許4件で、三洋は国内外の液晶メーカーに特許をライセンス供与し、「多くの液晶テレビや高精細画面の携帯電話に使用されている」という。

   三洋によると、この特許をシャープも使っており、ライセンス料を支払うよう交渉してきたが、まとまらなかったという。三洋は「前々から東京地裁にシャープを提訴する準備をしてきており、今回シャープに提訴されたから反訴したわけではない」などと説明するが、たまたま両社の提訴が同じ週に重なったとは考えにくい。

和解に向かうのか、徹底した裁判闘争に向かうのか

   一方のシャープは25日、台湾の液晶パネル大手の友達光電(AUO)と、同社のパネルを使う国内外のテレビメーカー6社を米国際貿易委員会に訴えた。しかし、シャープはこの時点でAUOの名のみ明らかにしたものの、三洋を含む6社については一切公表しなかった。従って、マスコミも三洋が後日、シャープを提訴するまで、シャープが三洋を訴えていることすら気付かなかったというのが真相らしい。

   AUOは当初、シャープにライセンス料を払って液晶パネルを生産してきたが、2010年末で契約期限を迎えた後は契約を更新せず、シャープは「違法行為に対して、知的財産権を厳格に管理する姿勢を示す必要がある」と判断した。三洋は米国で販売する液晶テレビにAUO製の液晶パネルを使っているため、提訴の対象となった。

   日本の大手電機メーカー同士の今回の特許侵害訴訟は、関係者によると、液晶技術の「類似の特許」をめぐり争われることになる。それだけに、両社の訴訟が最終的に和解に向かうのか、徹底した裁判闘争に向かうのか、現時点では予断を許さない。