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「記者と不倫」で警部懲戒 処分は重いのか当然か

   週刊文春や全国紙などが、「千葉県警の男性警部がNHKの同県警担当女性記者と不倫していたとして懲戒処分(戒告)された」と報じている。インターネットの個人ブログなどでは、「不倫で懲戒は重くないか?」「相手が担当記者だから特別に処分されたのでは?」などと憶測をよんでいる。

   週刊文春最新号(2011年2月17日号)は、情報公開請求で得た千葉県警の「処分伺書」などをもとに、同県警の妻子がいる警部が、当時同県警担当だったNHK千葉放送局の20代女性記者との不倫を理由に戒告処分を受けたと報じた。2月9日付朝刊で全国紙各紙もこの処分を伝えた。

千葉県警はノーコメント

警部と記者の不倫を報じた週刊文春
警部と記者の不倫を報じた週刊文春

   読売新聞などによると、守秘義務違反にあたる情報漏えいの事実はなかったと県警は判断している。とすると、処分理由は不倫そのものなのだろうか。読売報道によると県警監察官室は「私的な問題での処分は、公表基準と照らし合わせて発表しないものがある。本件については処分したかどうかもコメントできない」としており、処分理由以前に処分そのものにノーコメントだ。

   公務員は、不倫すると懲戒処分されるのだろうか。ちなみに、戒告は懲戒処分の中では最も軽く、ほかの懲戒処分には免職や停職、減給がある。戒告を受けると、今後の昇給の際に昇給幅が少なくなるなどの影響が出る。

   国家公務員の懲戒処分については、人事院が「懲戒処分の指針」を公表し、処分対象となる「標準例」を挙げている。各都道府県などは独自に指針を定めることもできるが、人事院指針を参考にしているところも多いようだ。同指針で公務以外の「非行関係」をみると、殺人などの違法行為のほか、「酩酊による粗野な言動等」などが挙がっている。不倫に類する記述はない。不倫はしてもOKなのか。

   人事院職員福祉局によると、「標準例はあくまで例で、該当行為すべてを挙げたものではない」「不倫即懲戒、とはならないが、ケースバイケースで処分対象となることがある」という。「不倫によって職場の規律維持を乱し、職務に支障が出た」場合や国家公務員法などが定める「信用失墜行為の禁止」に反すると判断された場合などだ。

   「信用失墜行為の禁止」は地方公務員法でも定められており、例えば学校の先生と保護者との不倫は、同禁止条項に触れると判断されることがあってもおかしくなさそうだ。

警察庁指針「不適切な異性交際は戒告」

   民間の場合はどうか。労働審判などに詳しい辻角智之弁護士によると、企業が懲戒を行う場合は、職場の秩序維持のためであり、不倫というプライベートなことは「ストレートには懲戒にはつながらない」という。

   不倫相手が職場で騒ぐ、などのケースは職場秩序の問題につながり兼ねないが、そもそも相手の主張が正しいのかどうかを含め事実確認が困難なこともあり、処分はせずに「丸くおさめるケースが多いようです」。もっとも、処分以前に会社に居づらくなって本人が辞めてしまうこともあるようだ。仮に会社が「不倫禁止、懲戒」の規定を定めていても、実際に会社側がそれを適用して処分しようとすれば、規定条項の正当性を争うこともできるという。

   公務員に話を戻すと、「警察官と担当記者の不倫」は、「学校の先生と保護者の不倫」に類するということなのだろうか、それとも警察官はほかの公務員とは違い、「不倫即懲戒」なのだろうか。

   警察庁も、人事院とは別に「懲戒処分の指針」を公表している。みてみると、規律違反とみなされる「私生活上の行為」の欄に「不適切な異性交際等の不健全な生活態度」という記述があり、懲戒の種類は「戒告」と書いてあった。警察職員の場合は、「不倫即戒告」と読める。今回の千葉県警のケースも戒告だ。

   ちなみに、処分公表の基準も警察庁は定めており、「私的な行為に係る懲戒処分」の場合、発表するのは「停職以上」となっている。戒告は対象外だ。もっとも、不倫相手が警察担当記者だった今回の場合、純粋に「私的な行為」なのか、「職務遂行上の行為」(この場合は戒告でも発表、ただし別途プライバシー配慮規定もある)にかかわる部分はないのか、素朴な疑問が残る人も少なくなさそうだ。