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販売のトヨタに忍び寄る不安 「プリウス」人気で足腰が弱る

   トヨタ自動車のハイブリッドカー(HV)「プリウス」の販売好調が続く一方で、トヨタ系販売会社の多くの幹部たちが顧客管理に対する危機感を強めている。

   「座っていても売れる状況が続きすぎた。売れるのはいいが、お客さまの家を一度も見たことがない者が増えている」という状況にあるためだ。

販売員は外に出かけなくともノルマを達成

トヨタ「プリウス」
トヨタ「プリウス」

   プリウスの一人勝ちを横目で見ていた輸入車勢は「プリウスユーザーは大票田。数年後には大きな草刈場になる」と、プリウスから輸入車に乗り換えるユーザーは多いとみる。

   自動車販売業界内では、トヨタ系販社が自社保有客であるプリウスユーザーを守りきれるかどうかが注目されている。

   トヨタ系販社では、エコカーの減税と補助金の効果で2010年の前半はプリウスを指名買いする来店客が後を絶たず、販売員は外に出かけなくともノルマを達成した。そのせいで、新車を売った相手の家を訪問する活動を十分に行えなかったという反省がある。

   「販売のトヨタと言われたようにお客さまとの結び付きが強く、アフターフォローの良さもトヨタのウリの部分だった」という販社の幹部たちは、プリウス購入者と販社の結び付きは弱いと感じているわけだ。

   2008年のリーマンショック以降、販売減に苦しんでいたトヨタ系販社の救世主となったのは、2009年5月のフルモデルチェンジを機にトヨタ初の全チャンネル併売車となったプリウスだ。その販売台数は減税と補助金の効果やトヨタ、トヨペット、トヨタカローラ、ネッツの4チャンネルで販売したことなどにより、09年、10年と2年連続で登録乗用車の車名別販売台数トップを獲得した。

   ところが人気の高さが販売の現場に混乱を招いた。需要に対して供給が追いつかない状況が続いて人気がさらに高まったことや、排気量のダウンサイズやHVに興味を持つ新規ユーザーが増えたこと、さらに10年6月頃からはじまったエコカー補助金終了前の駆け込み需要などが、販社の来店客数を急激に増大させた。これがリーマンショック後に販売効率の向上に取り組んでいた販売現場に誤解を生み出した。

   販売員は外回りなど地道な販売活動を行わなくとも販売目標は達成できた。さらに外回りをしたくとも補助金終了前の駆け込み需要期には平日も朝から来店があり、外に出られない状況となっていた。

2012年から輸入車に移行するユーザーが増える?

   しかも販売が急増したことで、新車を納車した後の「調子伺い」が確実にできたかどうかに疑問を持つ幹部もいる。プリウスをはじめとする新車購入者に対するアフターフォローが不十分な時期があったわけだ。

   その一方で価格帯の中での競合車や実走行燃費などを気にする新車購入検討者の中には、プリウスとフォルクスワーゲン(VW)「ゴルフ」「ポロ」、BMW「1シリーズ」などを比較するユーザーも存在する。このためHVに満足できなかった、お金に余裕のあるユーザーが、すでにプリウスから同じ価格帯のゴルフなどの輸入車に乗り替えるケースも出てきている。

   VW勢をはじめとする輸入車の販売店の多くは「日本の道路のすべてが渋滞しているわけではないので、実走行燃費ならプリウスに負けることはない」とし、新車購入から3年後の初回車検到来時に車を買い替えるユーザーが多いことに着目。「プリウスユーザーの中には新物好きや人とは違った車に乗りたいと思って購入したユーザーがいる。輸入車に乗りたいユーザーは多いはずで、これだけプリウスが売れすぎると他の車に乗り替えたくなる」。早ければ2012年あたりから輸入車に移行するユーザーが目立つようになるとみている。