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原発から北西で高い放射線量 避難地域を超えて広がる

   福島第1原発の爆発後に、北西方向の広い範囲で高い放射線量が観測され、土壌汚染は現在もかなり深刻のようだ。それは20キロ圏の避難地域を超えており、今後、事態がさらに深刻化した場合、避難のあり方などの見直しを迫られそうだ。

   米エネルギー省がまとめた放射線量マップでは、原発から北西方向が真っ赤に染まっている。

南東の風と雨で汚染範囲が拡大か

北西方向に赤い帯が…
北西方向に赤い帯が…

   その長さは、30キロほどもある。米軍機から2011年3月17~19日に測定した一帯の放射線量は、1時間当たり125マイクロシーベルトだった。これは、8時間浴び続ければ、一般の人が1年間に浴びる放射線量の限度1000マイクロシーベルトに達する高い値だ。

   米マップでは、さらに北西に離れた地域でも高い数値を示している。

   この結果に沿うように、60キロほど離れた福島市で、爆発後の3月15日から高い線量が検出された。文科省によると、同市では同日に1時間当たり24マイクロシーベルトを観測。平常時は0.04というから、その600倍もの高濃度で、2日も続けて浴び続ければ年間限度に達することになる。

   その後は、米軍機からの測定値も低下し、文科省の調べでは、福島市で28日現在3マイクロシーベルトほどに下がった。しかし、原発から北に25キロほど離れ、30キロ圏の屋内退避地域にある南相馬市よりも、かなり高い値が続いている。

   60キロも離れた福島市で線量が高い原因は、原発からの風向きにあるらしい。

   新聞各紙によると、線量が急激に上がった15日は、東電が原発周辺で南東の風が吹いていたことを観測している。福島市でもこの日は、東寄りの風だった。翌日からは、西寄りの風に変わっているが、15日は雨やみぞれ模様の天気だったため、大気中に浮遊していた放射性物質が地表に落ちた。その影響で、この日以降も高い線量が続いたようだ。

30キロ圏を超える地域でも耕作ができない可能性

   米マップの赤い分布に沿うように、一帯の土壌からも高濃度の放射性物質が検出されている。

   福島第1原発から北西に40キロほど離れた飯舘村では、2011年3月20日に土壌1キログラム当たり16万3000ベクレルのセシウム137が観測された。文科省の調査で分かったもので、福島県内で最も高い数値だ。

   平常時は100ベクレルほどといい、その1600倍にも当たる。

   朝日新聞の25日付記事によると、検出された数値は、1平方メートル換算で326万ベクレルになるとの研究者の試算がある。4万ベクレルを超えれば、国が放射線管理区域に指定しなければならず、研究者から「飯舘村は避難が必要な汚染レベル」との指摘が出ている。

   同日現在では、同村の土壌汚染は、1キログラム当たり2万7900ベクレルにまで下がっている。しかし、まったく同じ場所で採取されたわけではなく、研究者の試算からすると、それでもなお管理区域に指定すべき汚染レベルということになる。

   実際、筒井信隆農水副大臣は28日の国会答弁で、農水省も土壌調査を進めており、それ次第で、30キロ圏を超える地域でも耕作ができない可能性があることを認めた。

   また、原発は予断を許さない状態が続いており、再爆発などの不測の事態がないとは言えない。こうしたことから、国の避難指示についても、同心円にこだわらず気象状況や線量観測結果に基づく柔軟な対応が今後求められそうだ。