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放射性物質流出が止まるメド 「数か月」はあくまで目標

   福島第1原発から放射性物質が流出する事態はいつまで続くのか。今回はじめて「(流出を止めるのに)数か月」はかかるとの見通しを政府関係者が示した。ただ、「数か月」はあくまで「目標」のようで、先行きが不透明な状況はしばらく続きそうだ。

   「これ以上の放射能の外部への排出で、国民のみなさんに不安を与えることは許されない」。政府が東電内に設置した事故対策統合連絡本部の事務局長でもある細野豪志・首相補佐官は2011年4月3日の「新報道2001」(フジテレビ系)に出演し、こう語った。

「おそらく数か月後がひとつの目標」

   細野氏はさらに、「それ(流出防止)を達成するのがどれくらい先になるのか。おそらく数か月後がひとつの目標になると思うんですが」と続けた。

   4月3日には、枝野幸男・官房長官も会見で、原子炉冷却と放射性物質流出防止を達成するための「一般的なやり方」について、「月単位の時間はかかる」との認識を示した。

   細野氏は記者団にも「少なくとも数か月」との見通しを語っており、朝日新聞は1面トップ(4月4日付朝刊、東京最終版)で「放射能 漏出抑止に数カ月」と報じた。記事では「細野氏ら政権側が示した『数カ月』というメドも、冷温停止状態にたどり着く時期とみられる」と指摘した。冷温停止状態とは、炉内が水循環で冷やされ、炉内の水が100度未満になり安全になっていることを指す。

   ただ、細野氏は「新報道2001」では、放射性物質の流出防止について「数か月が目標」との見解を示した後、「さらにその先に原子炉を冷却する仕組みを完全につくって安定させる目標があり、その目標をいつの時点で達成するのか。その目標なりをしっかり出すべきだと思う」と語っており、原子炉内が安定的な状態になるのは、「数か月」のさらにその先、との認識をもっているようだ。

   流出の「元」を断つための冷却システム回復のほかにも、「対処療法」として原子炉格納容器などを覆う建屋上部が吹き飛んだ1、3、4号機を特殊な布で覆う案も検討されている。

廃炉は「恐らく20~30年では終わらない」

   原子力関連施設の設計に携わった経験ももつ経済評論家の大前研一さんは3月19日、講演で、建屋などをテント様のもので覆って放射性物質流出を防ぐ案を披露し、その設置には「3か月かかる」との見通しを語った。

   仮に「数か月」で放射性物質の流出が抑えられたとしても、それで「一件落着」とはならない。原子炉から核燃料を取り出すためには、冷温停止状態になった後さらに「数年」(読売新聞など)、「3~5年」(大前氏)は冷やし続けなければならないという。

   さらに廃炉のためには、通常作業でも20~30年はかかるとされ、読売新聞(3月31日付朝刊)では、「恐らく20~30年では終わらない」とする松浦祥次郎・元原子力安全委員長のコメントを紹介している。

   旧ソ連で1986年4月下旬に起きたチェルノブイリ原発事故からほどなく25年が経つ。今でも半径30キロ圏内は許可なく立ち入ることが禁じられている。

   菅直人首相は4月1日の会見で、福島第1原発問題について「長期戦も覚悟」と語った。