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「円高か円安か」専門家も分かれる 「70円台から90円台」まで幅広く

   東日本大震災後の米ドル円相場が揺れている。東京外国為替市場のドル円相場は震災後の2011年3月16日に一時、1ドル76円25銭を付けて過去最高値を更新。18日には先進7カ国(G7)が10年半ぶりに協調介入を実施して82円台へと下落した。

   市場の投機的な動きを封じ込めるのに、日本銀行が3月の円売り介入に投じた金額は6925億円。その効果もあって、ドル円相場は円安に振れて4月5日時点ではさらに円が弱含みになっている。同日は一時1ドル84円49銭まで下落したあと、84円20~32銭前後で推移している。

「年末には95円がターゲット」

   円高か、円安か――。米ドル円相場の今後の動向は専門家のあいだでも見方が分かれているようだ。

   外為どっとコム総研シニア・ストラテジストの岡田剛志氏は「現段階では85~86円がひとつのボーダーラインになっていて、円安に振れると一気に進む可能性がある」と話す。

   いまの円高の背景には、米国の金利上昇への期待がある。米国の金融緩和の「出口」戦略に見通しがつきつつあり、米連邦準備理事会(FRB)が年末までに金利を0.75%引き上げるともいわれる。米国の景気回復が鮮明になるほど、円安に傾くというわけだ。岡田氏は、「年末までに1ドル86~87円の円安になる」という。

   言うまでもなく、国内では東日本大震災の復興と福島原発事故の影響が焦点。あるFX業者の幹部は、「復興のため、国内はあと1~2年は現在の低金利政策が続くだろうし、赤字国債の発行も間違いない。カネ余りが目に見えていて、投資マネーは株式や商品先物などのリスク投資に向きやすくなる。おのずと円投資が減る」と読む。

   日本経済の停滞が「さらに深刻になる」との見方もある。震災の影響ですでに工場の操業が停止しているため、部品不足やモノ不足が起こっている。国内の物流が滞り、短期的には輸出も減少する。原発事故の影響で野菜の輸出制限という事態にも陥っている。

   半面、原油価格の上昇などで輸入コストは膨らむ。「経常黒字が減って、円高要因がなくなる」(前出のFX業者の幹部)という。このFX業者の幹部は、年末までに1ドル93円、「95円がターゲットかもしれない」とみている。

「年末までに1ドル70円時代に突入」説も

   専門家の予測では、「そうではない、円高が進む」と見る向きもある。「ミスター円」こと、榊原英資元財務官(青山学院大教授)は週刊ダイヤモンド2011年4月9日号で、「協調介入はせいぜいあと1~2回」「年末までに『1ドル70円時代に突入する』と読んでいる」とのコメントを寄せている。

   年度末を越えたことで、円高要因とみられていた国内企業による「ドル売り円買い」の動きなども一服している。しかし、ある証券系アナリストは「これから復興が立ち上がっていくと、国内企業が外貨建て資産を売って円を買う動きは強まるはず」と指摘する。

   1995年の阪神・淡路大震災の際には、震災から3か月後の4月19日に最高値(1ドル79円75銭)を付けた。その「震災後の円高シナリオ」が生きているとの予測もくすぶっている。