J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

自動車や電機業界で「輪番停電」 夏の電力ピーク対策に浮上

   電力需要がピークを迎える夏に向け、日本経団連は、産業界が自主的に取り組む「節電計画」作りを進めている。2011年3月から東京電力が実施したような、いつどこで行われるか直前まで分からないような「計画停電」では、各社が生産計画も立てられず、結果的に計り知れない規模の生産停滞となりかねないためだ。

   ただ、各業界のなかでもさまざまな思惑があり、自主節電策をまとめるのも一筋縄でいかない面もある。

大口の企業需要減に道をつけるのが先決

   東京電力は夏に向けて火力発電所の能力増強を急ぐ。重油を焚きまくることになるが、この際、二酸化炭素(CO2)排出量など気にしていられない。事故が起きた福島第1原発を除いても「7月末の電力供給能力は4650万キロワット程度は確保できる」としている。

   ただ、冷房機器がフル稼働する、7月末~8月初めごろの真夏のピークの需要は平年で5500万キロワットが想定されている。2010年のような猛暑がやってくれば6000万キロワットに達する。大規模な計画停電などの対応を取らなければ、首都圏のあらゆる機能がマヒしかねない。

   そこで、何とか自主的に節電しようというわけで、経団連はピーク時の電力需要を25%抑えることを目標に対策に乗り出した。25%というのは、猛暑で6000万キロワットの需要が起こっても4650万キロワットあれば何とかしのげる、という算段だ。ただ、電力消費の2割超を占める家庭にも協力してもらわないと難しい。ただ、あまり長時間冷房が使えず健康を害し、場合によっては熱射病になるようなことになるのは大問題で、難しいところだ。

   いずれにせよ、大口の企業需要減に道をつけるのが先決ということで各業界が議論を始めているが、まとまるのは容易ではない。

鉄鋼業界は「輪番は困難」との考えで一致

   自動車業界は各社の工場を曜日ごとに「輪番」で稼働する案を軸に検討を進めている。今は主に週末に各社一斉休むことが多いが、例えばトヨタは日月曜日、日産は火水曜日、ホンダは木金曜日……を休業という風に順番に休めば、確実に需要を抑制できることになる。ただ「東電エリアに生産設備がほとんどないトヨタやマツダがどうやって付き合うのか」という調整課題は残る。

   電機業界も輪番停電を検討している、と一部で報じられたが、自動車業界ほどにはまとまっていないようだ。半導体のように一度止めると再稼働まで1週間程度かかる工場もあるため、なかなか意思統一が難しいのだ。

   いったん止めた高炉をフル生産に戻すのに数日かかる鉄鋼業界も「輪番は困難」との考えで一致しており、昼間の操業率を抑えて夜間操業に振りかえることで何とかできないか、と検討している。

   一方、化学業界は自家発電設備が充実しており、東電に頼らなくてもいいという。CO2を排出し放題になるという問題はあるが、これはもう目をつぶるということだろう。

   夏場に腐りやすい食品も扱う流通業界の悩みも深い。照明は落とせるが、冷蔵設備を切るのは難しいため、対応に頭を抱えているのが現状だ。

   各業界とも4月中に対応策をまとめる考えだが、全体としてピークに25%抑制できる方策を打ち出せるかどうか、困難な道のりになりそうだ。