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金、NYで連日の最高値更新 インフレ懸念「まだ上がる」?

   金の価格が連日、史上最高値を更新している。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物価格は2011年4月6日の終値で、取引の多い6月物が1オンス1466.5ドルを付けた。一時は1463.7ドルまで上昇、なおも上昇する気配がある。

   金先物の価格は日本でも上昇していて、東京工業品取引所(TOCOM)では4月7日の取引時間中に、取引の多い12年2月限月で一時、前日比12円高の1グラムあたり4005円まで上昇。4000円を突破し、28年ぶりの高値水準を付けている。

金現物、震災後250円近く上昇

   TOCOMによると、金先物の上場来高値は1982年9月9日の1グラム4326円。あと1割ほど上昇すれば日本でも記録更新となるが、「通常、金はドル換算して取引されるので、当時の為替レートを考えれば、現時点でも最高値圏の水準にあります」と話す。

   2011年4月7日の終値は前日比3円高の3995円で引けた。

   一方、金の現物価格も上昇。田中貴金属工業によると、4月7日の小売価格は前日比32円高の1グラム4236円だった。震災のあった3月11日が3988円だったことから、250円近く上昇したことになる。小刻みに一進一退を繰り返していたが、3月30日から7営業日続伸。この間に200円超も上昇した。

   金が買われている背景は、金が「インフレに強い、安全資産」とされるからだ。

   金の価格上昇のもっとも大きな要因は、原油高にある。原油もニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で4月6日、国際的な指標となっているWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の5月物が一時1バレル109ドル台を付けて、2年半ぶりの高値圏となった。

   リビアをはじめ多くの産油国が集まる北アフリカや中東情勢の緊迫化に加えて、日本での福島原発事故の影響で「反原発」が強まれば、再び化石エネルギーへの注目が集まり原油価格はますます高騰する。

   原油価格の高騰でインフレ懸念が強まり、つれて金価格も上昇する。こうした流れは当面続きそうだ。

世界中にある不安材料

   インフレ懸念は世界的に強まっている。2011年3月以降、ブラジルやインド、韓国、タイなどの新興国が相次いで「金融引き締め」を発表。4月5日には中国もインフレの抑制を狙いに、10年10月以降4回目の利上げに踏み切った。

   さらには欧州中央銀行(ECB)や、米国も量的緩和策の拡大策を6月に打ち切るとの観測が広がっている。

   また、ポルトガルやスペインなど欧州でくすぶる財政不安に、米国の景気回復も足どりが確かなわけではないことも不安材料としては小さくない。ある証券アナリストは、「現状はリスク資産への投資を強めたいが、まだ不確実性が高く思い切れない。いわば、投資先を探して資金が漂流しているような状態です」と分析する。

   そのため、これまでの金融緩和でだぶついた投資マネーが、実物の裏づけのある「金」に逃げているというわけだ。