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社債も発行できず 資金調達に苦しむ東電

   東京電力が資金調達に困っている。当面の資金繰りとしてメガバンクなどから約2兆円を調達したものの、福島第一原子力発電所の事故によって信用力が低下して株価は急落、社債の金利も急上昇している。

   これまで東京電力は、資金調達の多くを社債の発行でまかなってきた。東電を含む「電力債」は電気料金という安定した事業収入が得られるため、「国債よりも安心できる運用先」とまでいわれた。ところが一変、2011年4月の電力債の発行は4年4か月ぶりにゼロになる見通しだ。

震災前の23倍に上昇

   社債の金利は、国債利回りに発行体の格付けなどを加味した一定の金利を上乗せする形で決まるので、信用力の高い企業ほど金利は低い。東電債はこれまで最低水準で発行していた。それほど、東電の信用力が高かったというわけだ。

   ところが、東日本大震災による電力供給力の低下と「原発不信」の高まりで信用力が低下。スタンダード&プアーズ(S&P)などの格付け会社が社債の格付けを相次いで引き下げ、東電債の上乗せ金利は急上昇(価格は下落)していった。

   金融情報サービスのアイ・エヌ情報センターによると、震災後の3月25日時点の上乗せ分がすでに0.67%に上昇。これが直近では2.56%と約23倍にまで上昇している。

   ちなみに、他の電力債では、東北電力債が0.4%、関西電力債で0.22%、一般事業債でも新日本製鉄債で0.19%、三菱商事債で0.2%だから、東電の信用力がいかに急激に低下しているか、わかる。

賠償金、どう手当て?

   現在、東電債の発行残高は約4兆8000億円。東電の有利子負債額の約7割を占めていて、社債の償還費用は毎年約5000億円にのぼる。必要な資金は例年4月に調達するが、それができなくなっている。

   社債が発行できず、メガバンクなどから約2兆円を借り入れ、償還費用は確保、当面の原発事故の対策費用と夏の電力需要に向けた火力発電所の稼働にかかる費用に充てることにしている。

   しかし、借り入れた資金には原発事故による住民への損害賠償費用は含まれていない。

   東電は当面の資金繰りを銀行融資に頼らざるを得ない状況だ。ただ、これまで東電債を引き受けてきたのもメガバンクや生命保険会社で、このまま金利の上昇が続くと、こうした金融機関も多額の損失処理を迫られることになる。

   「国有化の議論がくすぶっているし、社債のデフォルト(債務不履行)は考えづらい。とはいえ、銀行負担はかなり重くなるので、追加融資には慎重にならざるを得なくなる」(外資系アナリスト)とみている。