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上場企業の「震災損失」は深刻 被災、稼働停止に東電株暴落

   東証に上場する3月期決算企業の決算発表が2011年5月13日にピークを迎えた。何と言っても今年は東日本大震災の影響が焦点だが、2011年3月期決算では、震災関連の損失計上が相次いでおり、合計は2兆円を軽く超えそうだ。このため、最終(当期)利益で赤字転落する企業が続出した。

   また、2012年3月期の業績予想は、夏の電力不足やサプライチェーン(部品供給網)寸断の影響が読み切れず、東証1部上場の2割強が公表を見送っており、震災前の水準に戻るのは容易ではない。

JXホールディングスは1260億円損失

   13日に業績を公表したのは、1日としては過去最多の528社。震災の影響で決算をまとめるのが遅れた企業が相次いだのが主因だ。この日の発表分までで3月期決算企業の9割が公表を終えた。「兜クラブ」と呼ばれる東証の記者クラブでは13日の午後3時ごろ、決算資料を手にした各社の広報担当者で立錐の余地もないほどごった返した。

   SMBC日興証券が東証1部企業の13日発表分まででまとめたところでは、2011年3月期の経常利益は前期比49%増の27兆5909億円と2期連続の増益。「旺盛な新興国需要を業績回復に取り込めた」(同証券)ようだ。ただ、2011年1~3月期については、前年同期比11%減の4兆9304億円と「震災減益」に陥っている。

   各社の決算発表では、震災の影響による損失計上が相次いだ。「1兆円規模」と報じられている東京電力(20日発表予定)がワーストなのは確実だが、「暫定1位」は仙台市の製油所などが被災した石油元売り大手、JXホールディングスの1260億円。2012年3月期も300億円の損失を見込む。高萩光紀社長は決算会見で

「復興費用はかさむが、JXを強くする契機としたい」

と述べ、復旧を急ぐ考えを改めて強調したが、仙台の製油所が本格稼働するのは12年夏まで待たなくてはならない見通しで、震災の痛手は大きい。

第一生命は、東電株で約1000億円の評価損

   「暫定2位」は国内全工場を稼働停止にしたトヨタ自動車の1100億円。工場休業中に発生する人件費などの「固定費」などが相当かさんだようだ。こうした事情は自動車各社に共通する。

   また、震災後に急落した東京電力株を保有する企業も打撃を受けた。約4%を保有する事実上の筆頭株主である第一生命保険は、約1000億円の評価損計上を余儀なくされた。三井住友フィナンシャルグループなど3メガバンクもそれぞれ300億~800億円程度の評価損を計上し、利益を圧迫された。

   一方、業績を見送る企業はSMBC日興証券のまとめでは、13日までに決算発表した東証1部1197社のうち、22%の262社に達した。このうち219社は昨年は公表していたのに今年は非公表で、震災の影響と見られる。

   見送りの背景には、サプライチェーンの寸断がいつ復旧できるかが読み切れないことが大きく、特に自動車大手8社はすべて非公表。電機各社も多くが見送った。「夏の電力不足よりサプライチェーンの問題の方がかなり深刻」(大和総研)との見方も強く、サプライチェーンの復旧が業績の行方も握る。