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被災地で「餓死12人」の真偽 国会議員の指摘に大反響

   被災地の福島県南相馬市などで餓死者が12人も出たと自民党の森まさこ参院議員が指摘して、反響を呼んでいる。警察などは「承知していない」としているが、餓死に近いケースはありうるようなのだ。

   きっかけは、森まさこ参院議員が2011年5月26日の参院法務委員会で質問したことだった。

警察などは「承知していない」

ツイッターでも指摘
ツイッターでも指摘

   森氏はツイッターでも明かしており、それによると、福島県警の嘱託とみられる死体の監察医から5月20日にメールがあった。そこでは南相馬市などで震災後に餓死者が出たとあり、森氏が23日に電話すると、この監察医は、3月下旬から4月上旬ごろまでに12人もが餓死したと明かした。死体検分書には、餓死という欄がなく「衰弱死」と記したという。

   その後、森氏が南相馬市の戸籍係に問い合わせたところ、震災後に衰弱死した人が7人いたと、5月28日に回答があった、という。

   南相馬市では、原発事故後に屋内退避地域に指定されるなどして、一時生活物資に不足する状況にあった。桜井勝延市長が3月下旬、ユーチューブでこの状況を「兵糧攻め」と訴えて、世界から反響があったほどだ。

   こうした状況の中で、ついに餓死者も出ていたことになるのか。

   森氏の国会質問に対し、小宮山洋子厚労副大臣は答弁で、「自宅に留まられた方に救援物資が届かなかったと言うケースも考えられる」としながらも、「そうした事実は把握していない」と述べた。

   また、南相馬署の副署長は、取材に対し、餓死者について「承知していない」と答えた。どの監察医が情報源かも分からないという。南相馬市の災害対策本部でも、「衰弱死の7人が、餓死かは分かっていません」とした。

   厚労省の災害救助対策室でも、それ以上の情報はないという。

   しかし、餓死と断言できなくても、震災がらみで衰弱死することはないのか。

   この点について、南相馬市内のある内科医は、そんな例があったと明かした。

震災がらみで衰弱死する例はあった

「うちの患者さんなんですが、震災後に衰弱して亡くなった80代のおばあちゃんがいたんですよ。体が不自由だったため避難せず、息子は、食べ物を家に残し、枕元にも、おむすび3つを置いて家を出ました。3日後に避難から戻るつもりだったんですが、いざ家に戻ると、おむすびも食べずに亡くなっていました。これは、震災がらみの例と言えると思います」

   高齢者には、車もなく買い物に出る体力もない人が多く、中には自力で食べられない人もいる。また、南相馬市に支援物資が山と届いても、市内にそれを配達する人もいない状況だ。息子などもいない高齢者には、震災後は介護の手もなかなか届かなかった。こうした中では、衰弱死する高齢者がいても不思議ではないという。

   この内科医は、衰弱死には、老衰も含まれるのではないかとしたが、違う見方をする別の内科医もいた。この内科医は、こう言う。

「老衰なら、『老衰』と書きますし、『衰弱死』とは書かないでしょう。こう書くと、食べ物を与えられないなどして、衰弱しなくてもいいのにそうして亡くなったという意味が感じられます。避難を促されても家を出たくないという体が不自由なお年寄りなら、衰弱死する可能性はあると思いますね」

   衰弱死に老衰も含まれるかについて、南相馬市の市民課では、医師が書くものなのでよく分からないとしながらも、死亡届には、「老衰」の記載もあることを認めた。そして、「衰弱死」の記載も多いかについては、「そんなに見ないと思います」と明かした。

   つまり、7人もいるということは、震災がらみの可能性があるということのようだ。