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中国人観光客が急回復の兆し 温首相の「鶴の一声」後押し

   東日本大震災と東京電力福島第一発電所の事故の影響で途絶えていた中国からの観光客が戻りつつある。

   中国政府は震災後、日本への渡航を自粛するよう呼びかけ、団体旅行のビザの発給も停止していた。しかし、2011年5月21~22日に開かれた日中韓3か国首脳会談のため来日した温家宝首相が「中日間の観光交流を回復し拡大させたい」と表明したことで中国内に「安心感」が広がってきたようだ。

6月には700人のツアー客が訪日

観光地は、夏に向けて中国人観光客の増加に期待する(写真は、政府観光局のホームページ)
観光地は、夏に向けて中国人観光客の増加に期待する(写真は、政府観光局のホームページ)

   政府観光局によると、中国人観光客は2010年に4月としては過去最高の15万788人を記録。それに比べて、11年4月は49.5%減とほぼ半減した。震災と原発事故の影響で、「日本への安心・安全に対する懸念が高まったため」(観光局)と話している。

   震災後に中国人ツアー客が初めて訪日したのは4月29日で、西安から福岡に入った。その後は5月20日に、瀋陽から東京に入ったツアーだけだ。

   瀋陽からのツアー客が5月25日に1泊した山梨県鳴沢村のホテル「じらごんの富士の館」は、ふだんから中国や台湾など海外からのツアー客を多く受け入れているが、やはり震災後はキャンセルが相次いだ。「33人が、震災後初めての中国人ツアー客でした」という。

   山梨県内には、2010年に延べ23万8450人の中国人観光客が宿泊した。富士山や八ヶ岳、石和温泉などを訪れ、夏にピークを迎える。観光課は「なんとか盛り返していきたい」と力を込める。

   瀋陽の日本総領事館によると、6月には約700人のツアー客が訪日する予定で、募集中のツアーにも約200人が集まっているという。政府観光局は「ツアーの募集広告を見て参加する、一般の観光客が訪日するにはもう少し時間がかかるでしょう」としながらも、「震災直後1年は回復できないと思っていました。V字回復とはいかないまでも、まずは夏場に向けて期待していますし、温首相のひと言は大きな後押しになっていると思います」と話している。

ツアー客呼び込みにトップセールス

   受け入れる国内も、準備を進める。東日本大震災直後の2011年3月27日に北京便が就航した富山県。5月8日、富山県の石井隆一知事は北京を訪れ、中国の国家旅行局や大手旅行代理店の幹部らと面会しトップセールスを展開した。

   「訪中は震災前から予定していましたから、結果としてそういった場になったということですが、富山へツアーをとしっかりアピールしてきました」(観光課)と話す。現在、上海を中心にツアーを募集しているという。

   長崎県と、大型リゾート施設のハウステンボスと子会社のHTBクルーズは、来春開設する長崎‐上海航路の運行計画を5月30日に発表した。長崎県と上海市の交流15周年記念事業の一環として第1便を11月3日に試験運航。その後、中国人観光客が増える旧正月にあわせて、12年1月からは週1~2往復の不定期の営業運航を実施する。

   政府は沖縄県を訪れる中国人観光客に対して、一定期間(90日)、何度でも日本に来ることを認める「観光数次ビザ」の発給を決め、7月1日から導入する。沖縄県の振興策の一環でもあるが、「観光数次ビザ」の発給は日本では初めての試みだ。