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被災地支援に「新顔」が続々 出資で応援「オーナー制度」

   東日本大震災ではボランティアや義援金など多くの日本人が、それぞれに、さまざまな支援をしている。そんな中、日常生活の延長上で、多様な支援の在り方が注目されている。

   一番身近な支援が、被災地産品を買うこと。中でも手軽なのが、被災自治体のアンテナショップ。

被災地の食品企業を応援するファンド

   東京都内では岩手県「いわて銀河プラザ」(中央区銀座)、「宮城ふるさとプラザ」(豊島区東 池袋)、福島県「ふくしま市場」(江戸川区東葛西)ではそれぞれ、魚の缶詰や地酒、牛タンや名物の菓子、納豆や野菜などが人気。各店、2011年4月以降、売り上げの新記録が続出。「特に若い人の来店が増えているのが目立つ」という。

   島根、鳥取、奈良など他県のアンテナショップが、被災県支援として、茨城県産メロンなどの特産品を集めたフェアを実施し、収益の一部を義援金に充てるといった動きもある。

   市町村独自では、東京都世田谷区の用賀商店街に岩手県陸前高田市のアンテナショップ「田舎のごっつお」がある。2008年の岩手・宮城内陸地震の際の応援イベントをきっかけに2009年から同商店街が運営している。震災後、「がんばっぺ陸前高田フェア」と銘打って、ヤーコンカレー、米崎りんご、前沢牛ハンバーグ、三陸わかめなど県の特産品を次々に取り上げたフェアを11弾にわたり連続的に実施。今後も続けていくという。

   中元の贈答品も東北産の商品が人気だ。日本橋高島屋が「東日本応援ギフト」と銘打って東北産の70点を集めたコーナーを設けるなど、「省エネ」と並んで今年の中元商戦のテーマになり、売り上げも好調。

   震災で打撃を受けた各地の産業復興を支援するために出資する「オーナー制度」も続々と誕生している。音楽ファンドからスタートした「ミュージックセキュリティーズ」(東京都千代田区)は、被災地の食品企業を応援する「セキュリテ被災地応援ファンド」を開設。出資金5000円、応援金5000円、手数料500円の計1万500円を1口として、復興の暁には各社の製品などを贈る。

   設備をすべて流されたというしょうゆ・みその醸造の 「八木澤商店」(陸前高田市)、津波で工場が全壊した製?の「丸光食品」(宮城県気仙沼市)、焙煎工房と製菓工房を含む気仙沼の2店舗が瓦礫と化した「アンカーコーヒー」(気仙沼市、3店舗は営業継続)など、6月9日時点で8社が登録、それぞれに140人~1024人が出資している。

海産物収穫ができ次第、牡蠣やノリ、ワカメなど送る

   NPO法人「農家のこせがれネットワーク」(東京都港区)は「蔵王ありが豚(とん)応援サポーター」に取り組む。宮城県名取市で飼っていた2000匹の豚もろとも豚舎を津波に流された高橋通義さん、祐輝さん親子のサポーターを募っている。生き残った93頭からの復興を支援しようと、6月9日現在、1口1万円で478人が577口出資している。

   津波・火災に加え風評被害に苦しむ宮城県などの農家300戸以上が結集する「旬のおまかせ野菜セット」は、1口1万2000円、3回1セットで全国どこでも「句のおまかせ野菜セット」(9~12種類入り、3~5人で1週間分)を宅配する仕組み。売上金の一部は、被災者農家の資材、設備支援に活用する。

   水産業支援もある。宮城県漁協浦戸支 所(塩釜市浦戸)の1口1万円の支援オーナー制度「うらと海の子」は、集まった資金を漁業資材の購入・漁業設備の修繕に充て、海産物が収穫できるようになり次第、牡蠣やノリ、ワカメなどを送る。震災の日付にちなんで311口応募した人もいるといい、既に1万口を超えた。

   「アイリンク」(仙台市、斎藤浩昭社長)が取り組む「復興かき」オーナー制度「セーブ・サンリク・オイスターズ」は、1口1万円で復興後の三陸牡蠣20個を届ける。6月9日現在、1万4125人が1万7832口を出資している。

   政府の復興構想会議でも、「三陸水産復興支援債」 といった目的別債券を発行するアイデアも出されている。国や県による第三セクターが水産業などのインフラの復興を賄い、債権者には海産物や農産物など現物を贈ったり、購入できたりするポイントに換算する、といったアイデアだ。

   せっかくの義援金がなかなか被災者に届かない「お役所仕事」に比べ、こうした直接自分で考え、自分で納得のいく支援が出来る仕組みは、いよいよ注目されそうだ。