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いったい何をやっているの? 消費者庁は「お粗末」「出直せ」の声

   発足から約2年経つ消費者庁に対し、消費者行政を監視する内閣府の消費者委員会が20011年7月、「消費者行政の『司令塔』としての役割を十分果たしていない」として、体制や業務の抜本的な改善を求めた。

   消費者庁は消費者の視点に立った行政を目指し、09年9月に発足したが、未だに影が薄い。最近では「国民生活センター」との一元化を図ろうという動きを強めているが、「本来の業務の立て直しが先決」と批判が高まっている。

大臣は6人目、一本の法律も起案せず

   消費者庁は、各省庁にまたがる消費者行政を一元管理し、「産業育成」の視点が中心だった従来の行政のあり方の転換を図る目的で誕生した。発足の直接的なきっかけは、ガス瞬間湯沸かし器による中毒事故や中国製冷凍ギョーザ食中毒事件などで政府の対応が遅れたこと。迅速で強力な措置を打ち出すことが特に求められた。

   しかし、「発足時に期待した働きをしていない」との指摘は少なくない。最近では、焼き肉チェーン店「焼肉酒家えびす」の集団食中毒事件の際の対応だ。いち早く注意喚起すべき立場の消費者庁だが、関係省庁などとの連携を欠いた結果、店名公表が遅れた。消費者委員会の中村雅人・委員長代理(弁護士)は抜本改善を求めた会見で、「牛肉の放射性セシウム汚染問題についても、消費者庁の注意喚起は最もお粗末だった」と述べた。

   実際、発足から約2年も過ぎたのに、消費者庁は1本の法律も起案していない。こうした期待外れの対応の背景には、消費者庁の体制的な問題があると言われる。現在の細野豪志氏で消費者担当相は既に6人目。職員のうちの多くは他省庁からの出向者で占められており、腰をすえた消費者行政が遂行できる環境ではない。

「国民生活センターとの一元化」は総スカン

   そんな消費者庁が今、最も熱心に進めているのが、国民生活センターを廃止し、丸飲みしようという一元化だ。議論の発端は、昨年12月に独立行政法人の見直し方針が閣議決定され、両機関の業務重複も指摘されたこと。しかし、消費者団体などからは、むしろ「消費者行政の後退につながる」との反発が強い。全国クレジット・サラ金問題対策協議会など15の消費者団体は7月、「消費者庁は強引に一元化の手続きを進めようとしている。消費者目線がまったく感じられない」と強く抗議。消費者委員会も「一元化には関係者の意見が反映されていない」と批判している。

   国民生活センターは1970年に設立され、全国の自治体の傘下にある消費生活センターと連携して、情報を収集・分析するなどし、迅速な注意喚起などの業務に務めてきた。国民生活センターが多様な法解釈を示すことで、各消費生活センターは地道な消費者相談の解決に必要な手がかりを得てきた側面が特に大きい。厳密な法解釈をするしかない消費者庁にセンターが飲み込まれたら、「センターの重要な機能が損なわれる」という批判があるのだ。

   反発が大きい一元化を断行しようとする背景には「実績のあるセンターを取り込んで、起死回生を図りたい」との思惑が透けて見える。「消費者庁はまず、自身の組織改善し、実績を上げるべきだ」との声が幅広い関係者から上がっている。