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斎藤佑樹「新人王」遠のく 5年ぶり対決で田中将大に力負け

   プロ野球が久しぶりに沸いた。2011年9月10日に初めて実現した斎藤佑樹(日本ハム)と田中将大(楽天)の投げ合い。

   斎藤にとってこの対戦は新人王獲得のキーポイントだった。敗戦はその大きなチャンスを逃したことになるだろう。

かつてのライバルも4年間で別格の存在に

   ファン待望の対決は田中の力勝ちだった。結果は、4-1。投球内容も田中が9回で被安打5、奪三振12に対し、斎藤はプロ初完投とはいえ、8回で被安打10、奪三振が1。甲子園で優勝を争ったライバルだが、斎藤が早大で投げていた4年の間に、田中はとてつもなく大きな存在になっていた。

「大学で投げているとき、田中は目標の投手だった。自分がプロを意識したときには、憧れになっていた」

   斎藤は田中との距離が離れていくのを感じ取っていた。一方の田中はそんな意識はなかったようである。

「斎藤が大学で投げているとき、周囲は何かにつけて僕と斎藤を結び付けた。僕自身は、そんなの関係ないよ、と思っていた。だって僕はプロで勝つことに必死だったから」

   初めて対戦したとき、田中は通算60勝を挙げ両リーグを代表する投手になっていた。斎藤は5勝でプロの水に慣れたころ。

   評論家の見方はこうである。「投手として見たとき、今は格が違っていた」。だから結果は仕方がないところだろう。

   斎藤は、敗れたことで新人王争いからも後退することになった。田中との投げ合いに勝っていたら間違いなく大きなポイントを稼いだと思う。

   新人王は記者投票で決まる。だれもが注目した対田中に勝てば、印象は強く、その1勝が3勝分ぐらいの価値を持つから、投票に大きな影響を持つことになる。その意味で、斎藤は、ライバルに負けたことより、新人王争いに響く方が痛い。

   なにしろ新人王だけは「一生に一度のチャンス」のタイトルである。世界のホームラン王である王貞治も400勝投手の金田正一も、連続試合出場世界一の衣笠祥雄も手にしていない。

パ・リーグ新人王争いは楽天・塩見とロッテ・伊志嶺がリード

   斎藤のいるパ・リーグは優れた新人が多い。

   投手では楽天の塩見貴洋が斎藤-田中がぶつかった時点で7勝をマークしていた。プロ野球にはあまりなじみのない八戸大出身の左腕でドラフト1位。西武のクローザーとして台頭してきた牧田和久は日本通運からドラフト2位で入団した右の下手投げ。打者ではロッテのドラフト1位、東海大出身の伊志嶺翔大外野手が活躍中。9月に入っても打撃10傑に入っている。

   斎藤には人気があり、プロ野球を盛り上げた功績がある。総合力での評価がどうされるか。塩見との差を早く縮めることが大事である。

   塩見にとって力強いのは監督が新人王輩出の名人、星野仙一であるということだ。投手起用には定評があり、勝ちゲームを作る読みもある。そして中日監督時代に与田剛(現NHK解説者)森田幸一、川上憲伸らの投手新人王(打者では立浪和義)を出している実績を持つ。今年も何が何でも塩見にタイトルを取らせにいくはずだ。田中の勝利は塩見を援護したことにもなっている。

   斎藤は先発ローテーションに入っているから、残り試合から予測すると、多くて5試合ぐらいの登板か。全部勝てば10勝に届くが、それはかなり厳しい。それらを思うと、田中との投げ合いで敗れたことは大変な意味を持つものだった。

   現時点での取材記者の予想は「おそらく塩見と伊志嶺の争いになるだろう」。西武が猛追に成功して3位に食い込むことになれば、当然抑えとして数字を残す牧田が一気に浮上してくる。

(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)