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東電へ「天下り」51人 「今もそんなにいたのか」と批判再燃

   まさかこんなにいたとは――原発事故を受け、「天下り」を通じた行政側と東電との癒着ぶりが批判されてきたが、今も東電に在籍する公務員OBが51人いることが今回判明し、あらためて注目を集めている。

   東電の山崎雅男・副社長は2011年9月26日、衆院予算委に参考人として出席し、「天下り」が同社に約50人いることを認めた。

経産省からはゼロ、警察OBが多い

枝野経産相はどう「対処」するのか
枝野経産相はどう「対処」するのか

   山崎副社長の回答は、自民党の塩崎恭久・元官房長官が、「天下り50人以上」とする毎日新聞(9月25日付朝刊)の報道に触れつつ質問した際のやりとりの中で出たものだ。

   塩崎氏は、こうしたもたれ合いが、原発事故賠償スキームを決める際、東電側に甘く、国民負担を増やす形になったことに影響があったのではないか、という趣旨の指摘をした。

   塩崎氏の指摘に対する直接的な答弁はなかったが、枝野幸男・経済産業相は、天下り実態の調査を指示したことを明らかにした。

   東電などによると、「天下り」公務員OBは、8月末で51人。顧問3人中、国土交通省出身が2人、警察庁1人。嘱託48人の内訳は、都道府県警出身31人、海上保安庁7人、地方自治体5人、林野庁2人、気象庁2人、消防庁1人。電力業界所管の経産省からはゼロという。

   実は、4月末までは経産省出身の石田徹・元資源エネルギー庁長官が1月から顧問として在籍していた。

   原発事故後、電力会社への天下りに反発が強まり、枝野官房長官(当時)が4月中旬の会見で、経産省幹部の電力会社への天下り自粛と石田氏の自発的辞任を促す発言をした。石田氏はこの発言で辞任に追い込まれた形だ。もっとも、政府見解では、石田氏について「省庁側からの斡旋はなかった」として、「天下りではない」との認定だった。

   天下りの定義論はともかく、東電への51人の天下り中、「経産省はゼロ」は、どうも「仮の姿」に近いようだ。先の毎日新聞記事では、歴代4人の経産省(前身含む)首脳OBが天下り後、東電副社長を務めたと指摘した。

   東電によると、過去の公務員OBの在籍数についてはとりまとめていないが、今回の51人と比較して「大幅な増減はないもの」と認識しているという。

どんな必要性があり、何の仕事をしているのか

   「東電への天下り50人超」を報じるマスコミは、「もたれ合いの弊害は原発行政にも影を落とした」(毎日新聞)、「行政と電力業界の『癒着』として批判が出そうだ」(読売新聞)などと厳しい見方を示している。

   天下り関連の著書があり、近著に「公務員だけの秘密のサバイバル術」(中公新書ラクレ)がある兵庫県立大大学院の中野雅至教授(行政学)に聞いてみた。中野教授は、厚労省課長補佐や市役所勤務の経験もある。

   中野教授は、能力ある公務員OBが実力で、実務上必要とされる企業などで活躍すること自体は問題ないと考えており、「(公務員OBの民間就職の)何がいけないのか、ルールを決めた上での批判でないと意味がない」と釘を刺す。

   国家公務員制度改革関連法案は、継続審議中で成立していない。現行の天下り規制の枠組みは中途半端で、「事実上、野放し状態になっている」。まずは、問題点を整理して法的規制の線引きを明確化する必要がありそうだ。

   一方で、今回判明した「東電へ51人」については、「一企業として明らかに多すぎる」。競争から守られた電力業界という特殊な立場にある東電は、51人もの公務員OB雇用にどういう必要性があり、どんな仕事をしてもらっているかなどについて「説明する責任がある」と指摘した。

   枝野経産相は9月26日の衆院予算委で、東電への天下り実態を調査した上で「適切に対処したい」と述べた。野田政権が考える「適切」とは、どのような形なのだろうか。