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株価総悲観ムードは消え 買い先行になっていくのか

   欧州債務危機への過度の警戒感が後退し、2011年夏以降の世界的な株安の連鎖に一服感が出てきた。日経平均株価は、2011年10月19日の終値が前日比30円63銭高の8772円54銭。17日は131円64銭高の8879円60銭、18日は137円69銭安の8741円91銭と、上昇と下落を繰り返しているが、8300円台まで下げて底が見えなかった9月下旬~10月上旬の総悲観ムードは収まっている。

   ニューヨーク市場はもっと回復しており、ダウ工業株30種平均も14日には2か月半ぶりの高値。ただ、日本株の場合、「超円高」の定着に加えて新興国を含めた世界景気の減速など先行き不透明感は強い。

全体の「先行指標」とされる証券株が上昇

   東京株式市場で全体の「先行指標」とされる証券株を見てみよう。野村ホールディングスの19日終値は285円、大和証券グループ本社は279円。ともに直近の底値(10月5日の野村264円、大和259円)から約8%切り上げている。日経平均の19日終値が直近底値(10月5日の8382円98銭)から4.6%上昇したのと比べて証券株の上げ幅は大きく、市場では「株価の底打ち感から今後、買い先行になっていくことを示している」(国内大手証券)との見方もある。

   確かに、世界の市場を一時覆った欧州債務不安がいったん後退したことは好材料だ。欧州金融安定基金(EFSF)が銀行に資本注入できるなどの機能強化策について、一度は否決したスロバキア議会も再採決で可決し、ユーロ圏全17カ国の承認が出そろった。欧州連合(EU)のファンロンパイ大統領は10月23日にユーロ圏の政府債務危機への包括的対策を決めると発表。仏・ベルギー系銀行「デクシア」の解体・国有化も、弱体化した金融機関を放置しない姿勢が好感された。

   株式市場はこうした欧州危機への当局の対応に一定の評価をしているわけだが、さらにもう一段上昇する買い材料には乏しいとの見方も根強い。逆に不透明感を醸し出す要素には事欠かない。

世界の景気、指標は下方修正のオンパレード

   その一つが世界的な景気の減速だ。国際通貨基金(IMF)が9月20日に改定した世界経済見通し(実質成長率)はわずか3か月前の6月時点に比べ、下方修正のオンパレードだ。米国は2011年が1ポイント低い1.5%、12年は0.9ポイント低い1.8%。ユーロ圏も2011年は0.4ポイント下方修正し1.6%、2012年は0.6ポイント低い1.1%。新興国についても先進国の需要減などから「不透明感が強まった」と指摘し、2011、12年の中国やインドなどについて0.1~0.5ポイント程度、軒並み下方修正した。

   世界経済の減速は輸出企業がけん引する日本経済、日本株にとっても逆風だ。特に欧米諸国は財政出動の余地に乏しく、各国政府の需要創出に期待できないことも懸念材料だ。

   輸出企業にとっては1ドル=70円台後半で高止まる「超円高」も業績を圧迫する。内需型企業にとっても輸出企業の失速の影響は避けられない。

   こうしたことから、10月末にピークを迎える4~9月決算の発表では、通期見通しに下方修正が相次ぐと見られている。株式市場は下げが一服したとはいえ、投資家心理のさらなる改善は難しい状況との見方が強いようだ。