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府知事選に郷原弁護士浮上 「反橋下」で結集できるのか

   橋下徹・大阪府知事が転戦する大阪市長選にくらべ、「地味な選挙になりそう」と一時見られていた府知事選候補に、一転して知名度の高い人物が急浮上してきた。元検事でマスコミへの露出も多い郷原信郎・弁護士(56)だ。

   2011年10月21日、「民主党から打診」報道を受け、郷原弁護士はマスコミ各社に対し打診があったことを認め、「周囲と相談し、数日中には決断したい」「必要とされていればギリギリの検討をしたい」などと答えた。「(立候補に)前向きなのでは」との見方も一部で広がっている。

郷原氏は長崎知事選でも名前があがる

どうなる大阪ダブル選。
どうなる大阪ダブル選。

   郷原氏は最近では、九電による「やらせメール」に関して第3者委員会の委員長として、九電経営陣の姿勢を厳しく批判するなどし、テレビや新聞で大きく扱われた。

   長崎地検次席の経験もある郷原氏は、2010年2月の長崎県知事選の候補としても名前があがり、民主党から非公式の打診を受けたことがある。このときは立候補しなかった。

   中国地方で子ども時代を過ごし、東大に進学した郷原氏は、検事時代に大阪府内に勤務経験はあったのか。郷原氏の事務所に確認すると、「ない」との回答だった。

   「郷原氏浮上」のニュースが流れた11年10月21日中にも、橋下知事が辞職を表明する。任期満了の12年2月を待たず、11月27日に行われる大阪市長選へ転戦し、再選を目指す平松邦夫市長と直接対決する方針で、知事選との「ダブル選」になる。

   橋下知事が代表の地域政党「大阪維新の会」は、知事選の方には松井一郎府議(同党幹事長)を擁立する方針で、10月23日にも出馬会見があるとの報道もある。

橋下VS丸山の「行列対決」の可能性もあった?

   ポスト橋下知事の知事選候補にはこれまで、フリーキャスター辛坊治郎氏や中田宏・前横浜市長ら著名人の名前が挙がっては消えていった。改革派官僚として知られた経済産業省の古賀茂明氏(後に古賀氏は辞職)にもフラれた経緯がある。

   ここにきて、自身も「知名度がない」と認める松井府議に固まったことで、「知事選は地味になる」との見方が広がった。反橋下陣営の民主や自民の府連の間では、知事選候補選びは目立った動きがなかったからだ。

   ところが、両府連に急に動きが出てきた。「橋下知事の支援を受けた著名人なら勝ち目はないが、『知名度のない』候補なら…という空気が出てきた」(自民府連関係者)からだ。

   両党の府連会長同士が連携の方針を示唆しつつ、10月12日には丸山和也・参院議員(自民)への打診を自民府連幹部が公表した。丸山議員は、橋下知事と同じく、人気テレビ番組「行列のできる法律相談所」(日本テレビ系)に出ていた弁護士だ。丸山議員はマスコミの取材に対し、否定的な考えを示している。

   そこに今回、郷原弁護士への民主府連からの打診が明らかになった。

   そもそも民主と自民は、知事選と大阪市長選で同一候補を抱えて一致団結し、橋下陣営と対決できるのだろうか。平松市長は、4年前の市長選で民主の推薦を受けている。

8月末の橋下支持率65%

   複数の自民府連関係者によると、「『反橋下』で盛り上がっているのは、自民では大阪市議団だけでは?」。少なからぬ府議や他の市町村議員らの間には、知事選で民主党と一緒になって橋下陣営と対決する必要があるのか、と厭戦ムードもあるという。

   例えば8月末の朝日新聞などによる府民対象の世論調査で、橋下知事の支持率が65%となるなど、ひところの「8割超え」ほどの勢いは衰えているものの、自民支持者らの間でも橋下知事による改革(府政、大阪市政を問わず)への期待度は「まだまだ大きい」と話す関係者もいた。

   例えば郷原弁護士など知名度の高い人物を民主と自民などで共同で擁立することになれば、自民陣営は盛り上がるだろうか、との質問には、「橋下陣営は、候補者の知名度に関係なく強いからね」「府連幹部と『下』の我々の受け止め方は違うわな」といった冷めた答えが返ってきた。

   一方、先に触れた8月の朝日世論調査で、橋下知事が任期途中で辞めて大阪市長選に出ることについて、「賛成29%、反対56%」と反対の方が多くなるなど、橋下人気の陰りを指摘する声もある。

   平松市長は10月21日、知事選候補に名前が挙がった郷原弁護士について、「正義というものに厳しい目を持っておられる」と評価し、「大阪市民を守るという形で一致できれば共闘させていただきたい」と語った。