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公式ツアー以外は渡航自粛を要請 北朝鮮W杯観戦一体どうなる

   サッカーのワールドカップ(W杯)ブラジル大会アジア3次予選で日本が北朝鮮と対戦する平壌でのアウェー戦会場の視察結果が発表された。すでにサッカー専門の旅行代理店には、想定の3倍もの申し込みが寄せられており、代理店は驚きを隠さない。どんなツアーになるのか。

   日本が北朝鮮と対戦するのは2011年11月14日16時から。わずか2週間後だ。日本と北朝鮮の代表チームが平壌で対戦するのは1989年以来22年ぶりだが、どこの会場で行われるのかすら、明らかになっていなかった。

金日成競技場(5万人収容)で行われる

   11年10月31日になって、日本サッカー協会の田島幸三副会長が現地視察の結果を公表。少しずつ現地の様子が明らかになりつつある。

   田島副会長を含む視察団4人は10月26日から29日にかけて平壌に滞在。試合は、当初想定されていた羊角島(ヤンガクド)サッカー場ではなく、マスゲームの会場としても知られる金日成競技場(5万人収容)で行われることが明らかになった。ピッチの人工芝の状態も悪くはなく、夜間照明用の施設も国際基準を満たしていたという。

   また、朝鮮中央通信によると、金日成競技場では11年5月に国際サッカー連盟(FIFA)のレフェリー講習が行われたほか、11年9月にはアジアサッカー連盟(AFC)U-16アジア選手権予選E組(北朝鮮、東ティモール、マレーシア、中国、シンガポール)の試合が行われたばかり。国際試合の実績は、それなりにあると言えそうだ。

3泊4日で30万円、観光つき

   だが、懸念されるのがサポーターの受入体制だ。具体的な人数は明らかにされていないが、北朝鮮側は大幅な受入人数の削減を要求。日本側は、「到底納得出来る数字ではない」として、北朝鮮側と交渉を続ける考えだ。

   このカードはアウェー戦としては異例の人気で、サッカー観戦ツアーを専門にする旅行代理店「セリエ」(東京都千代田区)が9月中旬からツアーを募集したところ、10月28日の締め切りまでに65人が申し込んだという。同社では、

「影響を受けるのは、主にマスコミ関係者なのでは」

と、ツアーは問題なく行えるとみている。気になるツアーは、3泊4日で30万円。同社が10月10日から13日にかけて行った下見とほぼ同じスケジュールになる見通し。

   ウェブサイトに掲載された視察レポートによると、北京から空路で平壌入りし、サッカー観戦以外に、平壌市内観光や北朝鮮南部の開城(ケソン)、板門店がスケジュールに含まれている。いわば、北朝鮮観光の「定番コース」だとも言える。出される食事はチゲ鍋、平壌冷麺、ビビンバ、参鶏湯(サムゲタン)、アヒルの焼き肉など。観光客には食糧不足は無縁のようだ。

   下見で観戦したのは、羊角島(ヤンガクド)サッカー場で行われた北朝鮮対ウズベキスタン戦。観戦レポートでは、

「天然芝はきちんと刈込まれていてきれいに見えます。しかしピッチサイドにいつも見慣れているスポンサー看板がありません!」
「スタジアムはほぼ満席ですが、ウズベキスタンの選手が出てきたときでもブーイングは無し、自国の選手が出てきたときも大きな歓声はありませんでした。何故?」

と、普段の試合とは相当雰囲気が違うことを伝えている。

代表選手団、同行する報道陣は例外

   試合は北朝鮮が負けたが、観客は穏やかな様子だったという。

「自国の代表が負けてしまっても暖かい拍手で労をねぎらっていました。そして暴れるようなこともなく整然と退場していきました」
「スタジアムの外も騒ぎのようなことはなく、皆さん整然と帰路についていました。サポーターとのトラブルの心配はなさそうです」

   藤村修官房長官は11月1日午後の会見で、選手団やサポーター、報道陣に対する北朝鮮への渡航自粛要請を条件付きで解除する方針を発表した。ただし、解除の対象になるのは、(1)代表選手団(2)同行する報道陣(3)日本サッカー協会が募集する公式ツアーの参加者のみ。公式ツアー以外の観戦ツアー参加者については、引き続き渡航自粛を要請するといい、藤村官房長官は

「多数の制約が存在することをご自覚の上、行動願いたい」

と、注意を呼びかけている。公式ツアーの概要は、11月1日深夜にも発表される。