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ナベツネ氏、朝日・毎日新聞で吠える 「鶴の一声」批判に「どこ吹く風」

   プロ野球巨人「清武の乱」渦中にいる、ナベツネのニックネームで知られる渡辺恒雄氏(85)が、自らの「大物ぶり」を見せつけるかのように、あえて他の全国紙のインタビューに相次いで登場、持論を力説している。

   読売新聞グループ本社の代表取締役会長・主筆で、巨人の球団会長でもある渡辺氏は、自身へ向けられた「独裁」「私物化」批判に対し、どんな反論を繰り広げたのか。また、識者はインタビューをどう読んだのだろうか。

「僕は民主的だよ」

どうなる「巨人内紛」劇。
どうなる「巨人内紛」劇。

   2011年12月1日付朝刊の毎日新聞は、第3社会面のトップで渡辺氏単独インタビューの記事を掲載した。朝日新聞にも11月28日付朝刊でインタビュー記事が載った。朝日の方は、写真と映像計4枚を含み1ページ全面を使うという異例の大きさだった。

   いずれの記事も「巨人内乱」問題だけでなく、政治・経済状況や原発問題についても質問に答えている。両紙ともまずは巨人問題から質問を始めている。

   11月11日と25日の「反乱会見」で、前球団代表兼GMの清武英利氏(18日に解任)は、渡辺氏による巨人コーチ人事介入について、「鶴の一声で覆した」「コンプライアンス違反」と批判を展開した。

   清武氏は、両会見などで渡辺氏の「プロ野球の私物化」「独裁体制」を問題視する姿勢を一貫して示している。

   しかし、渡辺氏は、清武氏による批判について、「意に介さない」と言わんばかりの調子で質問に答えている。

   「僕は民主的だよ」(朝日)、「彼は(読売新聞が全面戦争するような)タマじゃないもん」「対等なけんかをする気はない」(毎日)

といった調子だ。渡辺氏個人としてではなく、会社として「来週か再来週あたりには(清武氏を)訴える」(毎日)としている。

   清武氏が巨人の「組織規定」などを根拠に「人事不当介入」と批判する点についても、渡辺氏は「巨人軍の定款」を引き合いに出しつつ「彼はこれを読んでいない」と切り捨てた。

魚住昭氏「『動揺や弱気』は感じられない」

   「本部長以上の人事やその他の重要事項」については、「読売新聞グループ本社代表取締役」の「事前の承認」が必要だとして、「彼(清武氏)にはないんですよ、そんな権限は」と「逆襲」している。

   渡辺氏といえば、2007年に表面化した自民と民主の大連立構想の「取り持ち役」として知られるなど「政界との距離」が近すぎるのではないか、という批判もかねてから受けている。

   こうした点を質問した朝日新聞に対しては、

「(読売新聞の社論を実行できる)内閣に知恵を授けて具現化するのは僕には正義だし、合理的なことだ」「朝日新聞の社論通りに実行する内閣なら倒さなければならない」

とはねつけた。見方によっては朝日が読売のトップに叱られているような形で、巨人問題にせよ、「政界との距離」問題にせよ、「批判」も「どこ吹く風」といった風情だ。

   こうしたインタビューの感想について、元共同通信記者のジャーナリスト、魚住昭氏にきいてみた。魚住氏は、「渡邉恒雄 メディアと権力」(2000年、講談社)などの著書があり、現在リレー連載中である「週刊現代」の「ジャーナリストの目」欄(12月3日号)でも巨人問題を取り上げた。

   魚住氏は、

「渡辺さんらしい話し方だ、と感じた。(渡辺氏の本を出した)約10年から、良くも悪くも変わっていない」として、「(清武氏の反乱会見を受け)動揺したり弱気になったりしているような様子は感じられない」

と評した。

   渡辺氏は朝日インタビューで、巨人については白石興二郎新オーナーに「任せようと思う」として、「野球に口を出すと、ろくなことにならん」と述べた。

   一方、日本の「財政再建」について、朝日や毎日、読売新聞を中心に共同提案をすべきだと両紙で訴えるなど、まだまだ「陣頭指揮」をとる姿勢をにじませる発言もしている。