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国内景気に「厳しい見方」増える 海外景気の減速と復興需要が「綱引き」

   国内景気が「悪化」しているという調査結果が続いている。日本銀行が発表した2011年12月調査の日銀短観では、製造業の経営者のマインドが「先行き大きく低下する」とされ、国内景気の先行き減速懸念が強まる公算が大きいことが示された。

   27日付の日本経済新聞社の「社長100人アンケート」(137社が回答)でも、国内景気が「悪化している」と答えた経営者は21.9%で、「横ばい」とあわせると76.6%に達した。欧州の債務危機をきっかけとする世界経済の減速懸念が、国内景気にも波及してきた。

世界景気も「悪化」が増える

   日経の前回調査(10月)で、年末ごろの見通しを聞いたときは、10.1%が「悪化の兆し」「悪くなっている」と答えていた。一方、「よくなっている」が12.9%で「悪化」を上回っていた。このときよりも今回は、経営者の国内景気の見方は厳しくなった。

   また、世界景気の現状でも、「緩やかに悪化している」「急速に悪化している」があわせて48.8%と5割近くを占め、前回の33.2%から大きく増えている。

   景気が回復軌道に戻る時期は「2013年以降」とする答えが74.4%に達し、2008年のリーマン・ショック時と比べて「より深刻」としている経営者が4人に1人にのぼった。

   しかし、第一生命経済研究所の首席エコノミスト、嶌峰義清氏は景気の現状を、「踊り場という感じ」という。欧州の債務危機や円高が景気の足を引っ張っているが、たとえば国内総生産(GDP)のマイナス成長が続いたり、失業率が上昇したりするような、「失速させるほどにはなっていません」と話している。

   また、みずほインベスターズ証券チーフエコノミストの櫻井宏氏も、「日本の経済成長率が再びマイナスに転じる公算は小さい」と考えていて、さほど悲観していない。

   その理由をこう説明する。

   「日本の企業は、キャッシュフローが潤沢で損益分岐点比率が低いことがあります。損益分岐点比率が低いということは、売上げが上がっていけば、急速に利益に結びついていくことになります」。2012年春以降の第3次補正予算が景気の下支えになり、さらに「米国景気の回復基調がプラスに働いてくれれば」と話す。

   経営者の景気に対するマインドは低いが、それは経営者としての慎重さゆえでもあるようだ。

欧州の債務危機「2月が山場」か?

   とはいえ、「内需がいきなり立ち上がって景気をけん引する、というのが難しい構造になっています」と、第一生命経済研究所の嶌峰氏は指摘する。景気の好転には外需環境の改善が重要で、「戦後、ここまで世界経済が欧州頼みになったことはなかったでしょうね。要は海外の景気減速というマイナスの力と、復興需要のプラスの力の綱引きで、どちらが勝つかと言うことです」と話す。

   欧州の債務危機をはじめ、海外のマイナスの力がいま以上に強まることがなければ、2012年春以降の復興需要で景気は徐々に持ち直し、マイナスの力が強まるようであれば景気失速のリスクも高まるというわけだ。

   欧州の債務危機はなおもくすぶっているが、前出のみずほインベスターズ証券の櫻井氏は「2月が山場」とみている。「おそらく市場はもう1度、債務問題の抜本的な解決を求めてくるでしょう。その際には円高が進行しますが、それをしっかり対応すれば、(欧州の債務問題が)長く覆い尽くすようなことはないでしょう」という。