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iPhoneないと生きていけない スマホにドップリ浸かる人たち
(連載「スマートフォン革命」第2回)

「知ってる? アイフォーン(iPhone)って世界で一番売れてる携帯ゲーム機なんだよ。あれ、これって井上さんから聞いたんだっけ?」

   ある美容系のクリニックで、カウンセラーとして働くA子さんは私にこんな話をしてくれました。自身が元モデルで美形であるからか、訪れる人への説得力は抜群。10年選手のベテランということもあり、4、5人いる若いカウンセラーはもちろん、オーナー、ドクター、果てはナースからの信頼も厚く、個人的な相談も打ち明けられるほど。文字どおり、クリニックになくてはならない存在となっています。

通話もメールもしなくなった

スマホはいまや人生の必需品
スマホはいまや人生の必需品
「いったい、どんだけカウンセリングしなきゃいけないんだ、ってね(笑)。アラフォーなのに、こんなにストレス溜めて、お肌の調子はどうしてくれるのよ…」

   これまでのストレスの解消法と言えば、「海外旅行、ドカンと買い物、金曜夜から土日にかけて高級グルメ3連発」でしたが、それも一段落。特定のカレシもいないなかでハマったのが、スマートフォン(スマホ)でした。

「それまでネットとかパソコンとか、ぜんぜん興味なかったのね。ところが、友達が持っていたiPhoneを見た時、純粋にカッコイイから欲しいと思っちゃって」

   それが去年のこと。以来、ドップリとスマホの世界に入り浸りとなりました。用途別にキレイに整理されたアプリの数は、「わかんないけど、40~50種類ぐらいあるかも。もう使ってないのもあるし」。

   親しい友人との連絡は、フェイスブックを主にツイッターも併用。通話は時間や場所を縛られるので滅多にしません。

「うーん、メールも打たなくなったねー。待ち合わせで遅れるって時ぐらいかなぁ。フェイスブックは画像を載っけて、ダーッとやり取りして盛り上がれるじゃない。友達のなかには、デート中の様子をコッソリ報告してくるのもいて、ワーキャー言い合いできて面白いのよ」

   そして、ソーシャルゲーム。出勤や帰宅途中、ランチの時間が周囲と合わなかった時など、一人でいるとついやってしまうのだとか。

「育てゲーっていうの? 作物や動物を育てるやつを何種類かやってる。失敗しつつもいまはかなり上手くいってるし、それにスケジュールとか思い出の画像とか、もう全部入っちゃってるから、iPhoneなくすとか考えられない。パニックよ、ホントに。その瞬間から、アタシどうやって生きていけばいいの?って感じ」

仕事の歴史から「浮気相手」まで詰まっている

   自営業のアラフィフ男性Bさんも、「iPhoneなくすとか考えられない」ひとり。BさんのiPhone 3Gは、画面のガラスにはヒビが入り、側面や裏面も傷だらけです。

「でも、愛着があるから捨てられない。4Sへの変更も、あえて見送ったぐらい。それぐらい愛着があるのよ」

   Bさんにとって、iPhoneは歴戦の友なのだそうです。

「難しい仕事、トラブった仕事、この2、3年の自分の歴史で、常にそばにあった。その記録や解決に向けたアイデアのメモなんかも、全部入ってる。その意味で、もうホントにパーソナル・アシスタント。後輩や息子に見せたら、それだけでOJTになる、勉強になる。ケータイは、仕事上の通話をするだけ専用」

   小学生の頃からラジオっ子だったBさん。出張の多い仕事にあって、アプリのインストールでラジオがどこでも聴けるのも手放せない大きな理由です。

   そして、もうひとつ。Bさんにとって、ある意味での黒歴史も詰まっています。

「要するに、遊んだオネーちゃんや浮気相手との全記録も入ってるのね。メールやチャットのログはもちろん、画像に動画も入れてある。この歳になると、ちゃんと稼いでいれば嫁もヤイノヤイノとコトを荒立てないしね、わりと油断してアレコレ保存してあるよ(笑)」

   出張の道すがら、現場で時間が空いた時など、「黒歴史」を紐解いてみることが多い、とBさん。過去のいきさつを復習することで、新たなオネーちゃんの攻略法や自分の至らなさに気づくのだとか。

「ああ、可愛い女だったなぁ、といったところから入るんだけど、メールのログを読み返しているうちに、『これはこういう言い方をしてたけど、本心はこういうことだったんだ』とか、気づきがあるんですよ。それで、女がこんなことを言い出したら、実はこうすれば良いんだと学ぶ。それを広げて、女子社員がこんな雰囲気になっていたら、こうやってあげれば良いのかも、とさらに気づく。思い出の品であると同時に、人生の教材でもあるんだよね」

   人生の教材が詰まったパーソナル・アシスタント。しかも、白歴史の教師と黒歴史の反面教師。そうなれば、手放せないのも必定です。

人生に必要、だから「依存」じゃない

   スマホの機能を目いっぱい使って、手軽に便利に使えるシステム手帳にコミュニケーションをプラスした使い方のA子さん。ある意味での王道です。対してBさんは、自分だけの秘密日記みたいな利用法。ブログやケータイ掲示板でも、同じような使い方をする人はいました。

   では、2人は「スマホ依存」なのでしょうか?

   異口同音の答えは、「依存ではない」。代表してA子さんの言い方をご紹介しましょう。

「依存って、本当は不必要だけど習慣化してしまったり、止められなくなることでしょ。スマホは、人生に必要なのよ。だから、依存ではないの。わかる?」

   正直、わかったような、わからないような…。

   いずれにせよ、人生と不可分、というところまで来ているスマホ。この勢いは、来年にかけてもますます加速していくのでしょうね。

(井上トシユキ)