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誰でも持つスマホ時代が到来 「どう使うか」で競うようになる
(連載「スマートフォン革命」第7回/アスキー総合研究所・所長 遠藤諭氏に聞く)

   「2011年のヒット商品」各種ランキングで首位を飾ったスマートフォン(スマホ)。過去1、2年で商品ラインアップが急増し、メーカー間の開発競争も激化した。

   従来型の携帯電話からの買い替えが進む一方、データ通信量の増大による懸念も生じている。「スマホブーム」は今後どうなっていくか、アスキー総合研究所・所長の遠藤諭氏に聞いた。

薄型テレビの「スーパーリモコン」として活用する

アスキー総研・遠藤諭所長
アスキー総研・遠藤諭所長

――スマホは2012年、どのように進化していくでしょうか。

遠藤 今日、国内のスマホ所有者はまだ2000万人に届いていません。総務省のデータによると、携帯電話加入者数は約1億2000万ですから、まだ完全に「スマホの時代到来」とは言えないでしょう。
   とは言え、2001年ごろは「どこまで普及するか」が不透明だったブロードバンドが今では広く行き渡っているように、スマホやソーシャルメディアも「当たり前の存在」になる日が来つつあります。今まではスマホを持つこと自体が格好いいとか、面白いアプリを見つけて他人に自慢するというファッション的な側面がありました。今後誰もがスマホを持つようになれば、ハード面の優位性よりも「いかに使うか」を競うようになるでしょう。2012年は個人的に、薄型テレビと、スマホやタブレット型端末の組み合わせに注目しています。

――具体的にはどうやって使うように?

遠藤 スマホやタブレットを「スーパーリモコン」として使うのです。単にチャンネルを操作する役割ではなく、スマホやタブレットを活用してテレビから流れる映像コンテンツと連動する、という意味です。
   今でもテレビ番組を見ながら片手にスマホを持ち、番組内容の感想をツイッターでつぶやいたり、フェイスブックで共有したりする人はいるでしょう。そこから1歩進んで、米国では好みの番組や映画をメニューから選んで「チェックイン」し、ゲーム感覚で番組情報を共有するアプリもあります。
   コンテンツを配信する側にも動きが出てきました。「ディズニー・セカンド・スクリーン」は、「iPad」に専用アプリを入れたあと、ブルーレイディスクで映画を視聴する際に該当メニューを選ぶと、テレビでは「本編」を、iPadでは映画のメイキングシーンなどのボーナスコンテンツが見られる仕組みです。
   薄型テレビの普及や価格の下落で、大型のテレビも購入しやすくなりました。テレビ1台ですべてを賄う「グーグルテレビ」も出ていますが、大型画面のテレビは「視聴用」に特化して、スマホやタブレットに別の楽しみ方ができる仕掛けを与える「ダブルスクリーン」が、来年のキーワードになると期待しています。

――スマホ自体の普及が進めば、手軽な使い方が可能になりそうですね。

遠藤 2014年には、国内の普及率が半数に達するとのデータもあります。アクティブユーザーは7割ほどに及ぶでしょう。一方で生産コストが高いわけではなく、中小メーカーでもつくれる。これらを考えると、近い将来スマホは机やいす、さらにはベニヤのような「ただの板」のように、存在して当たり前すぎて誰も気にしないようになるのではないでしょうか。

ドコモがiPhone出さない理由はない

――通信端末としてのスマホはどう変わるでしょう。例えば次世代高速通信(LTE)の普及は進むでしょうか。

遠藤 LTEは利用者だけでなく、データ通信の増大に伴って通信障害のリスクを抱える携帯電話会社にとっても普及は望ましいはず。利用可能な地域が全国に広がれば、例えば「アイフォーン(iPhone)」のSIMフリー版を手に入れて、NTTドコモの「クロッシィ」で高速接続環境を手に入れるという利用者が増えるかもしれません。

――そのドコモですが、2011年末になって「12年夏にiPhone参入」という報道が流れました。

遠藤 不透明ですが、個人的にはドコモがiPhoneを出さない理由はないと思います。アップルの「iPhone戦略」は確かに、各国1社からのみの販売でした。考えてみるとこれは、最初から一挙に多数の業者から発売されたらアップル側の対応も大変だから、ではないでしょうか。世界でこれまでに1国で複数の業者から販売している実績があり、国内でも「iPhone 4S」からKDDIが2社目として参入を果たしたことを考えれば「ドコモ版iPhone」の実現性は十分ありうる話です。

――米国では、データ利用量の問題から「パケット定額制」廃止に踏み切る通信会社が現れ、国内でも議論が出始めました。

遠藤 日米を比較すると、日本のスマホ普及率はまだ10%台なのに対して米国では、早くから「ブラックベリー」が出ていたこともあって、数年前には25%に達していました。そこにiPhone人気や米グーグルの基本ソフト「アンドロイド」を搭載した端末が続々と登場したため、定額制から従量課金制に移行せざるを得なかった事情があると思います。
   国内でもスマホがさらに普及すれば、データ量問題が深刻になるかもしれません。個人的には従量課金制になるのではなく、定額制を維持したままいわゆる「ヘビーユーザー」に対しては通信速度を遅くするほうが効果的だという研究結果もあり、そのほうが多くの利用者にとってハッピーではないかと考えています。