J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

「オウム」平田容疑者の説明に「矛盾」 どこまで本当なのか

   オウム真理教元幹部、平田信容疑者(46)が弁護士らに「オウムへの信仰心は相当前に捨てた」などと語っている。

   「改心の末の出頭」を思わせる一方で、警視庁側や事件の「共犯者」らの話と矛盾する部分もある。平田容疑者の話はどこまで本当なのだろうか。

「警察のフリーダイヤル約10回かからず」の真偽は?

   2012年1月10日、平田容疑者と逃亡生活を共にしていたとされる元信者を名乗る女が、平田容疑者と接見を続けている滝本太郎弁護士に付き添われ、警視庁大崎署に出頭した。

   警視庁は指紋などから教団看護師だった元信者、大阪府東大阪市に住む斎藤明美容疑者(49)だと確認し、犯人蔵匿の疑いで逮捕した。

   平田容疑者は、11年末の大晦日深夜の出頭後も、警察の調べに対し、逃亡の足取りについて「他人に迷惑がかかる」として供述を拒んでいた。

   出頭する直前の動きについては滝本弁護士に説明し、一部公表された。12月31日夜、公衆電話から警察のオウム事件関連の情報提供用フリーダイヤルへ「10回程度かけたが、話し中だった」。また、その後警視庁本部へ行ったが、いたずらだと思った機動隊員から「丸の内署か交番」へ行くよう求められた、などと話している。結局、丸の内署へ出頭し、逮捕された。

   このうち、フリーダイヤルへの電話に関しては、警視庁の調べなどによると、12月31日にはどこからも1本もかかっていなかったという。「話し中」はあり得ない、というわけだ。仮に通話中でも記録は残るそうだ。大きな相違点となっている。

   その一方で、警視庁本部での機動隊員の対応については同庁で事実だと確認しており、警察庁の片桐裕長官は1月5日の会見で、「対応として適切でなかったと言わざるを得ない」とコメントしている。

   公衆電話からフリーダイヤルをかける場合、機種によって、硬貨やテレフォンカードの使用が不要なものと、いったんは硬貨投入などが必要で、通話後に料金が戻ってくるタイプがある。平田容疑者が、フリーダイヤルに繋がっていないのに「話し中」だと勘違いした可能性も否定できない。

支援組織の関与はなかったのか

   平田容疑者が逮捕されたのは、目黒公証役場事務長仮谷清志さん監禁致死事件に関する容疑だ。

   平田容疑者は「仮谷さんには申し訳ないと思う」「(自分は)逮捕されて当然だ」などと話す一方、指示を受けて車を運転しただけで、当初は拉致計画は知らなかったと説明している。車内へ拉致される仮谷さんを見て初めて拉致だと分かったというわけだ。

   しかし、産経新聞の1月6日付朝刊などによると、同事件の共犯者、井上嘉浩死刑囚らは、警視庁による改めての事情聴取に対し、「平田容疑者は犯行計画を知った上で実行行為に加わった」という趣旨の説明をしているという。平田容疑者の説明とは大きく異なる。

   平田容疑者は17年近い逃走について、「ずっと国内」と説明している。一方で、「海外で、南方に潜伏していたのではないか」との観測も捜査関係者の間で出ている、と産経新聞(1月7日付)が報じている。

   ほかにも国内逃亡について、より大掛かりな支援組織の関与の可能性を指摘する声も出ている。

松本(麻原)死刑囚の写真「5年前に捨てた」

   元教祖の松本智津夫(教祖名・麻原彰晃)死刑囚(56)について「死刑執行は当然だと思う」と話す平田容疑者だが、2011年12月の時点でオウム関連裁判が「終結」したことを受け、松本死刑囚の死刑執行を先延ばしする目的があるのでは、との憶測も根強くある。再度「オウム裁判」が始まれば、松本死刑囚の証言が必要とされる場があり、死刑が先送りになるのでは、というわけだ。

   読売新聞(12年1月10日付朝刊)は、平田容疑者が取り調べ中、「蓮華座」というヨガの修行時などに行う足の組み方をしていることを受け、「(警視庁は)平田容疑者がまだ信仰を捨てていない可能性もあるとみて調べている」と伝えている。「蓮華座」については、平田容疑者は弁護士に「癖だ」「楽だから」と話しているという。

   新たに逮捕された斎藤明美容疑者は大阪で14年以上、平田容疑者と生活していたなどと話しており、今後はその供述にも注目が集まりそうだ。