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中選挙区制ゾンビのように復活? 「議員の質劣化」は「小選挙区のせい」

   衆院選制度改革の論議の中で、かつて廃止された中選挙区制の復活を望む声が国会議員の間で広がりをみせている。

   現状の政治の混乱や「議員の質の劣化」は、現行の小選挙区(比例代表並立)制にあると指摘する議員もいる。以前のように中選挙区に戻せば、「議員の質」は高まるのだろうか。

加藤・元自民幹事長「政治が貧弱になった」

野田政権は、選挙制度改革にどう取り組むのか。
野田政権は、選挙制度改革にどう取り組むのか。

   自民党の石原伸晃幹事長は、2012年3月4日の講演で、小選挙区制について、「死票」や「議員の質が劣化する」問題点を指摘し、次々回の衆院選から「中選挙区制度に戻すべきだ」と訴えた。

   2月下旬には、中選挙区復活を目指す超党派の「衆議院選挙制度の抜本改革をめざす議員連盟」の総会があった。計150人超の議員や秘書が参加し、議員本人出席だけでも、民主38人、自民44人をはじめ、公明、共産、社民などから90人以上に及んだ。

   総会では、代表世話人のひとり、自民党の加藤紘一元幹事長が「政治が貧弱になった。小選挙区制(導入)が原因ではないかと話になった」と説明し、中選挙区制復活を目指す考えを示した。

   加藤氏は、2月中旬や3月2日にもBS番組に出演し、中選挙区復活の必要性について語っており、アピールに熱を入れている。

   議連は2011年11月に発足した。もうひとりの代表世話人は、民主党の渡部恒三最高顧問で、一頃は公明党など中小政党の主張だった中選挙区制復活が、「2大政党」民主、自民にも広がりを見せている形だ。

   現行の小選挙区比例代表並立制は1994年に導入され、これまでに5回の衆院選を重ねている。それまでは、1選挙区から3~5人程度当選できる中選挙区制だった。

   議連の討議資料などで、小選挙区の問題点が指摘されている。しかし、それはかつて「中選挙区の問題点」としてやり玉に挙がったマイナス面と表裏一体の関係にあるようだ。

「制度よりあなた方自身が駄目なんだよ」

   「議員の質の劣化」に関する「小選挙区制のマイナス面」をみてみると、当選には幅広い支持が必要なため、候補者が「万人受けする主張」ばかりするようになり、「独自の主張をしづらい」状況が生まれ、専門的な政策知識をもつ政治家が育たなくなったと指摘している。

   一方、中選挙区時代は、同じ選挙区で同じ党から複数人が立候補することがあり、派閥の力が強まったり、「同じ政党なのに主張する政策が違う」といったことが起きたりし、問題視されていた。政策本位の選挙にならないため、「ドブ板選挙」という言葉に代表されるように、支持者の個人サービスに力を入れる政治になっていたとの批判があった。

   また、現行制度では「その時々の空気によって結果が大きく左右され」、政治を不安定化しているマイナス面があるとも議連は指摘している。

   これはかつて、中選挙区制が「政権交代が起こりにくい制度だ」と批判されたことの裏返しのようにみえる。

   小選挙区制が「死票が多い」のは確かだ。「5割弱の得票で7割強の議席獲得」などと指摘されている。導入前から問題視されており、当時も議論され、比例代表制と「並立」することで決着した形になっている。

   読売新聞は、2月27日付朝刊の社説で、中選挙区制時代の弊害を指摘した上で、中選挙区復活について「かつての弊害を繰り返すのでは改革に値しない」と断じている。

   ネットのツイッターなどをみると、中選挙区復活については賛否両論あるようだ。ただ、小選挙区制と「政治家の質」を関連付ける政治家発言に対しては、「冗談じゃあ無い。制度よりあなた方自身が駄目なんだよ」(ツイッター)といった声が寄せられていた。