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NECは「賃下げ」、シャープは「定昇凍結」 春闘、大手電機メーカーが苦しむ

   2012年春闘は3月14日に一斉回答が行われたが、東日本大震災や歴史的な円高、さらにはタイ洪水、欧州危機などで、かつてないほど厳しい内容となった。

   とりわけ薄型テレビや携帯電話などが不振の大手電機メーカーは苦しく、労使交渉の中でNECは賃下げ、シャープは定昇凍結に踏み込んだ。

労使とも賃金より雇用を優先

   NECは労働組合に4~12月の9カ月間、一般社員約1万6000人の月給を4%削減すると提案した。同社は携帯電話事業の不振などで2012年3月期に1000億円の最終赤字となる見通しで、構造改革が迫られていた。

   シャープも定期昇給の一時凍結を労使で協議することになった。2012年3月期に過去最大の2900億円の最終赤字に転落する見込みのため、定昇凍結で人件費を抑制する。同社の定昇凍結はリーマン・ショックで上場以来初の最終赤字となった2009年以来3年ぶりとなる。

   今春闘では大企業の多くは定昇を維持しただけに、NEC、シャープの苦境ぶりが際立つ。NECは一般社員の賃金カットだけでなく、役員は報酬を1~4割削減、管理職は5~7%賃下げすると提案した。

   同社は今年1月に1万人規模のリストラを表明したばかり。同社の労働組合は「業績悪化でコスト削減が必要という認識は共有しており、今後の対応を検討したい」とコメント。1万人規模のリストラと賃下げが同時進行する形となり、労使とも賃金より雇用を優先せざるを得ないとみられている。

   今春闘は、円高や東日本大震災の影響で定昇の維持が最大の焦点となった。大手電機の中で7800億円の最終赤字を見込むパナソニックはじめ、日立製作所、東芝、三菱電機など大半は定昇を維持した。トヨタ自動車、日産、ホンダなど自動車メーカーも一時金(ボーナス)の前年割れが目立ったが、定昇は維持した。

中小企業はこれからが本番

   経団連は今春闘で、震災と円高を理由に2004年以来8年ぶりに定昇凍結の可能性に言及していたが、大企業の大半は一時金を削っても、組合員との約束である定昇維持を選択した。

   今春闘の一斉回答について、経団連の米倉弘昌会長は「電機、自動車、鉄鋼など日本の主要産業が企業の存続や雇用維持を最優先し、精一杯の努力をした。定昇は経営サイドも重く受け止めており、一時金も微少な減少で済んだ」と評価した。

   シャープは社長が事実上の引責辞任を迫られるなど、経営側にとっても「痛み」を伴う結果となった。

   連合の古賀伸明会長は会見で「要求からすると十分でないかもしれないが、ぎりぎりの交渉で引き出した回答には重みがある。今回の中央の回答が地方の(中小企業などの)底上げとなるよう努力したい」と語った。連合が求めた総額人件費の1%上乗せは、今春闘でも経営側から明確な回答がなく、曖昧な決着となった。

   多くの大企業は定昇維持で妥結したが、中小企業の春闘はこれからが本番で、雇用や定昇維持をめぐる攻防が続く。中小企業の春闘は、大企業の一斉回答を受けて労使交渉が本格化し、3月下旬から5月にかけて妥結するケースが多い。