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地方のめぼしい未公開企業を開拓 東証、2012年は上場50社が目標

   東京証券取引所は2012年3月末、地方のめぼしい未公開企業を開拓するなどし、新規上場社数の向上を目指すことなどを柱とした2012年度の事業計画を発表した。

   ロンドン証券取引所と共同設立した「TOKYO AIM(東京エイム)取引所」も、ロンドン証取の持つ49%の株式を買い取り、完全子会社化してテコ入れを急ぐ。東京市場の地盤沈下を防ぐため、多くの新しい会社を迎えることが不可欠との危機感が背景にある。

証券会社とも連携し、自らも積極的に動く

   事業計画では、2011年度に42社だった新規上場企業を50社以上に増やすことを目標とした。また、市況悪化で特に11年末に低迷した株式の売買代金については、国内外の機関投資家に日本株アピールを強化するなどして、2011年度比15%増を目指す。

   新規上場については、地方の有力企業に目を向ける。各地の自治体や商工会議所、経済産業省の出先機関である「経済産業局」などと連携し、成長力のある未公開企業などを東証の「営業マン」が訪問する。営業マンたちは上場によって資本市場から資金を調達できることや、知名度、信頼度がアップするといった魅力を説明し、上場を勧める。

   新規上場の営業活動は、これまでも野村証券や大和証券などの証券会社が案件獲得にしのぎを削ってきた分野だ。しかし、2000年に年間200社ほどあった新規上場が最近は低迷しており、リーマンショック以降は二桁にとどまっている。このため東証は野村などの証券会社とも連携し、自らも積極的に動くべきと判断した。

「これだけ反応がないとは思わず、びっくりした」

   ただ、この取り組みは、2013年1月に経営統合する大阪証券取引所は別にして、札幌、名古屋、福岡の各証取とは競合する宿命にある。地方証取も地域振興の一環、というより取引所の存続をかけて上場企業の掘り起こしを続けている。実際、計画を発表した会見では、九州のブロック紙である西日本新聞の記者が「福岡証取とどうすみ分けるのか」と質問。斉藤惇社長は「横から入ってどうとかやるつもりはない。全国的な展開を考えている企業に東証に来てもらいたいということだが、競争になるかもしれません」と答えた。

   一方、「東京エイム」については東証の完全子会社とし、「TOKYO PRO Market」に衣替えする。ロンドン取引所の制度を参考に、リスク管理能力のあるプロの投資家のみが売買する市場にすることで、新興企業の市場である「東証マザーズ」より緩い上場基準とし、小規模ながら成長力のあるベンチャー企業発掘を目指した。しかし2009年6月のオープン以降、12年4月上場予定を含め上場は2社にとどまる。斉藤社長は会見で「これだけ反応がないとは思わず、びっくりしたのは事実」と率直に述べた。東証は、12年7月をめどに東証単独運営に切り替え、上場社数拡大につながるよう、組織やルールの見直しを検討する。

   ただ、民間会社とはいえ、金融庁管轄下で公的機関色が強く「お役所」とも呼ばれる東証のこと。地方企業獲得にしろ、「東京エイム」の衣替えにしろ、営業マインド、モチベーションをどう醸成していくかも大きな課題と言えそうだ。