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日本の原発メーカー3社、海外に軸足 新興国や先進国の一部で市場拡張

   国内の原発メーカー3社の原発事業計画が2012年6月に出そろった。昨年3月の東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故を受け、国内での原発の新増設はあり得ない状況だが、海外では電力需要が高まる新興国などで事業展開できると見て、各社とも現状より拡大を目指す。

「世界から必要とされている」

   国内原発メーカー3社とは、東芝、日立製作所、三菱重工業を指す。1国に3社も存在するのは、世界広しといえども日本だけ。運転ノウハウを含めた技術力についても日本は世界一と言っていい水準で、メーカーに言わせれば「世界から必要とされている」(某社首脳)。

   1986年の旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と並ぶ、もしくはそれ上回る史上最悪の福島第1原発事故をきっかけに、ドイツが2022年までに全原発を停止することを決めるなど、先進国の中から「脱原発」にカジを切る動きが表面化している。

   言うまでもなく「震源地」である日本では、新たに原発を設置することなど許されるはずもなく、停止中の原発を再稼働させることでも、時の政権を揺るがす大問題に発展している。こうした中、日本の原発メーカーがまとめた計画では、少なくとも国内の原発事業は既存の原発のメンテナンスなどに限られることを覚悟している。

   ただ、人口が増え、それに伴って電力需要も高まる新興国や先進国の一部は別だ。日本の3社はここに照準を当てて新たな計画を立てた。原発事業の年間売上高を、東芝は2017年度に1兆円、三菱重工は2014年度に4000億円、日立は2020年度に3600億円と、現状よりいずれも2倍程度か、それは以上を見込む。

米国でも34年ぶりに認可

   新興国で一歩先を行くのが日立だ。リトアニアでの新たな原発建設受注をほぼ確実にする、議会での承認が6月21日に得られた。近く正式契約する見通しだ。これは福島第1原発事故後、日本メーカーとして初の新規受注の決定となる。事業規模は約4000億円。リトアニア北東部のビサギナスと呼ばれる地域に建設するもので、2021年の稼働を目指す。提携先の米ゼネラル・エレクトリック(GE)との共同受注となる。

   リトアニアは旧ソ連の構成国で、現在のロシアとは何かと対立しており、「ロシアだけには原発を作らせたくない」との思いが、極東の日本メーカーを受け入れさせたとされる。

   東芝は子会社の米ウェスチングハウスを通じて米国での展開に力を入れる。「売上高1兆円」達成の時期は従来の2015年度から2年後ろ倒しにしたが、米国ビジネスは順調で、米国で今春、34年ぶりに認可された原発の建設・運転を受注した。

   三菱重工は仏アレバと共同で中東ヨルダンでの新規原発受注を目指している。乾燥地帯でかつ、海岸線を離れた内陸部という、いざという時に水による冷却が必要な原発としては過酷な条件だが、下水を活用できる日本の技術が信頼を得て有力とされる。