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WBC不参加、選手会を説得できるか 元米国大使・加藤コミッショナーの手腕問われる

   侍ジャパンは不参加―――。プロ野球の世界選手権、第3回WBC(ワールドベースボールクラシック)で2大会連続優勝の日本の選手会が重大決断に踏み切った。大リーグ相手に不満を爆発させたのだが、そのごたごたの原因は「日本側のねじれ」にある。

ジャパン・マネーの貢献度に比べ、低い「配分率」

   選手会が態度を表明したのは2012年7月20日のこと。「日本が得るべき権利が失われている」というのが理由。つまり「利益の配分がおかしい」との主張である。

   WBCを主催するのは大リーグ機構と大リーグ選手会が出資するWBCI。そこには各国のスポンサー料やグッズなどの売り上げが入る。国別に見ると、日本のスポンサー料がかなりの部分を占める。ところが配分は、大リーグ側66%に対し日本は13%、といわれる。これに「大リーグは横暴だ」と反旗を翻したのである。

   新井貴浩選手会長(阪神)は「5年後、10年後の野球界を考えての決断だ」。選手会の全会一致を強調した。

   WBCは第1回から多額の日本マネーが大きな支えとなっていた。日本チームは、理不尽さを感じながら試合をしていたのが実情だった。昨年7月、日本の選手会はWBCIに対し異議を唱え「改善してほしい」旨を伝えており、聞き入れてくれなければ「不参加もある」と牽制球を投げていた。

   ところが日本プロ野球機構(NPB)は12月のオーナー会議で「参加する」と決めた。プレーをする選手が抵抗しているのに、それを無視したのである。

   WBCIは「別に日本が不参加でも大会はできる」と選手会に歯牙にもかけない態度を続けている。NPBが参加表明しているのだから当然だろう。

再選決まった加藤コミッショナー、調整失敗すれば辞任も?

   ここで浮かび上がってくるのは日本の加藤良三コミッショナーの手腕。元米国大使で「野球ファン」を自認するのだが、球界における行政能力には疑問符がつく。

   昨年(2011年)の東日本大震災に関連して開幕日の変更が問題になった。パ・リーグはいち早く「延期」を示したのに対し、セ・リーグは「予定通り」。コミッショナーはセを支持したのだが、ファンの声や選手会の要望、そして国から「何を考えているのか」としかられ、延期が決まった。「官僚出身なのに役立たず」と批判が出た。

   今回の件は大慌てだった。「野球ファンの期待を裏切る行為」と選手会に責任を押しつける姿勢を見せた。見苦しいと感じたのか「選手会と話し合い、参加するよう説得する」と自ら乗り出さざるをえなくなった。

   つい先日、加藤氏はコミッショナー再選が決定したばかりだが、実情はパ球団のほとんどが再選反対だった。「何もしない、できない」ことが知れ渡っているのである。米国寄りのお方だけに選手会との交渉は多難だ。WBC不参加が最終決定となれば、辞任に追い込まれる可能性もある。

(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)