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ルネサスの「リストラ」もたつく 早くも「法的整理しろ」の声

   経営再建中の半導体大手、ルネサスエレクトロニクスが国内工場の再編スケジュールなどの事業計画を2012年8月2日、2012年4~6月期連結決算発表と併せて発表した。

   工場再編についてはすでに7月3日、操業中の国内18工場のうち10工場を閉鎖・売却すると発表しており、その具体策を示したものだが、時期とともに閉鎖を明示したのは山口工場(山口県宇部市、2カ所のうち「後工程」の1カ所)にとどまった。

   8月10日には、社員約4万2700人の1割ほどに当たる5000人以上の希望退職者を募ると発表したが、リストラの進展の遅さが指摘されており、金融関係者の一部からは「会社更生法で法的整理した方がいい」との声も出始めている。

売却を検討しているが、相手が見つからない

   18工場の再編のスケジュールは以下のようになる。

   まず、閉鎖が示されたのは、山口工場(後工程)の他、柳井工場(山口県柳井市)のみで、柳井工場は「3年以内をめどに閉鎖を検討」とされた。残る8工場は「1年以内をめどに売却を検討」が5工場(函館=北海道七飯町、青森―青森県鶴田町、鶴岡=山形県鶴岡市・一部、福井=福井県坂井市、山口=山口県宇部市・前工程)。「3年以内をめどに売却か閉鎖を検討」が鶴岡工場の一部と、熊本錦工場(熊本県錦町)。「将来的に売却か閉鎖を検討」が大分工場(大分県中津市)と熊本大津工場(熊本県大津町)。

   こうして見ると、1年以内に結論を出す予定なのは10工場中、半分の5工場にとどまる。それも「売却を検討」で「相手のある話」であって、結果は見通せていないのが実情だ。

   実際、デジタル家電などに使われる「システムLSI」の主力工場である鶴岡工場は、台湾のファウンドリー(半導体の受託製造企業)世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)と売却交渉しているが、TSMCの張忠謀董事長は7月4日、台湾のマスメディアに「計画していない」と述べ、買収計画を否定したと報じられている。

「3年以内の売却」ではスピード感がない

   ほかにも例えば高知工場(高知県香南市)は朝日新聞が7月初めに「売却」と報じて地元に動揺を与えたが、ルネサスは直後に否定した。実際には内々で少し検討はしたものの、相対的に人件費が安いうえ、地元の反発もあって撤回したようだ。

   ただ、「リストラにあたって、そもそも3年間というスパンは長すぎる」(米系調査会社)というのが市場の大方の見方だ。

   ルネサスは2010年4月、日立製作所、三菱電機、NECの3社を母体に設立された。当時から過剰設備、過剰人員が指摘されながら、「なかなか手をつけられなかった」(日立関係者)のが実情だ。2012年3月期まで2期連続最終赤字となるに及んで、いよいよ本格リストラへ重い腰を上げたところだ。それが「3年以内の売却を検討」とあってはスピード感がないと言われても仕方ない。

   リストラ費用がかさむとはいえ、8月2日に発表した2013年3月期の最終損益は1500億円の赤字の見通しで、自己資本は毀損し続ける。会社更生法適用などによる法的整理で迅速なリストラが必要と指摘されるゆえんである。