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「慰安婦強制連行あるなら証拠示して」 橋下発言に韓国メディア「妄言」批判

   いわゆる従軍慰安婦の強制連行を否定する橋下徹大阪市長の発言に、韓国メディアがいっせいに反発している。

   韓国メディアが橋下批判のよりどころにしているのが、1993年に日本政府が軍の関与や強制を認めたとされる、いわゆる「河野談話」。だが、この談話は「誤解を内外に広げた」との指摘も根強い。

「韓国の皆さんにも出してもらいたい」

   問題視されているのは、橋下市長が2012年8月21日午前の囲み取材で話した内容。橋下市長は、日本の近現代史教育の問題点を指摘する中で、

「慰安婦という人達が、軍に暴行、脅迫を受けて連れてこられたという確たる証拠はない。もしそういうものがあったというなら、韓国の皆さんにも出してもらいたい」

と述べた。また、

「韓国の言い分を、この場で全部否定している訳ではない」

とも述べた。さらに、日本側と韓国側の議論が平行線をたどっていることから、日本政府は自国の立場を国民に改めて説明すべきだと主張。「河野談話」についても、

「中身について、もう一度、しっかり国民に説明しなきゃいけない」

と述べた。

橋下発言は「河野談話を否定する日本右翼の典型的な態度を反映」

   河野談話の内容は、

「慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した」
「(慰安婦の募集では)甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった」

というもの。これを根拠に、韓国側は「日本は軍の関与と強制を認めた」と主張している。

   このため、韓国メディアでは、橋下市長が河野談話に事実上疑問符を付けたことに対する批判が多い。例えば公共放送のKBSは、橋下市長の発言を「妄言」と紹介。発言は、

「河野談話を否定する日本右翼の典型的な態度を反映している」

と論評している。中央日報、ソウル新聞、ハンギョレ新聞も、同様の指摘をしている。

安倍内閣当時「強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」

   ただし、「河野談話」には、日本国内から批判の声も強い。例えば、読売新聞は今回の橋下市長の発言を伝える中で、

「韓国側に配慮し、あいまいな表現で政治決着を図る狙いがあったが、逆に強制連行があったという誤解を内外に広げる結果につながった」

と論評。実際、安倍内閣当時の07年には、政府は、

「(河野談話作成のための)調査結果の発表までに政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかったところである」

とする答弁書を閣議決定している。

ソウル新聞は女性スキャンダル蒸し返す

   中央日報やソウル新聞は、橋下氏の注目度の高さにも言及している。中央日報は、

「弁護士出身の橋下市長は極右的な指向と独断的なスタイルで、『橋下』と『ファシズム』を合わせて造った『ハシズム』や『ハシスト』というニックネームを得ている。日本では次期首相候補として議論されるほどの人気を得ている」

と論評。ソウル新聞はさらに辛らつで、今回の発言の背景を「保守右翼の票を意識した」としながら、

「大阪の高級風俗クラブで働いていた女性との、あらゆる変態的な愛情行為が週刊誌で報道されるほど、不道徳な政治家として認識されており、女性からの反発を買う可能性が少なくない」

と、週刊文春が暴露した過去の女性スキャンダルを蒸し返している。