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優勝のために「200億円投資」を実行 経営破綻したドジャースが打った「勝負手」

   これぞ大リーグ、という出来事があった。残り5週間の試合のために、日本円にして200億円を投入――。名門ドジャースが2012年8月25日、大型補強を行い、優勝に向けて勝負に出たのである。日本球界にとっては夢のまた夢の話――。

不振のレッドソックスから主力4選手を駆け込み補強

   ドジャースが決断した補強とは、レッドソックスから大物をゴソッと獲得したことである。通算130勝のエースで球界を代表するジョシュ・ベケット。昨年、最多安打を放ったアドリアン・ゴンザレス、盗塁王4度の実績を持つカール・クロフォードら4選手。放出したのはメジャー選手1名、マイナー選手4名。

   ということはスター選手の残りの契約金を肩代わりするということで、その総額は2億6000万ドル(約205億円)にのぼる。大リーグのペナントレースはあと5週間ほど。その短期間にこれほど多額の投資を行う狙いは「優勝」。

   ちなみにその大物3選手のサラリーは、ベケット1700万ドル、ゴンザレス2100万ドル、クロフォード2000万ドル。半端ではない。

   ドジャースは現在、ナ・リーグ西地区の2位につけており、戦力増強で逆転優勝が可能というところから、新経営陣は勝負に出た。「これで優勝の準備はできた」と鼻息は荒い。

   一方のレッドソックスはア・リーグ東地区で首位ヤンキースに大差をつけられ、優勝の望みはほとんどない。日本でも知られるボビー・バレンタイン監督は元気がなく、松阪大輔も役に立っていない。「来年の準備」という方針をファンに訴える今回の主力選手の放出だ。

「信じられないこと」起こすのが野球人気を保つ秘訣?

   ドジャースといえば昨年「経営破綻」したことで話題になったばかり。前のオーナーが夫婦ケンカしたことが原因の一つという信じられない話で、ヤンキースやジャイアンツと並ぶ名門の名を汚したといわれたものである。新たな経営者は投資家グループだが、その中にプロバスケットボール(NBA)のスーパースターで知られたマジック・ジョンソンがいることで注目を集めた。

   異なるリーグのトレードは8月いっぱいまで。これを「フラッグシップトレード」と呼ぶ。優勝可能のチームが残り1ヶ月のために補強するからで、接戦している財力のある球団はよくやる補強作戦だ。

   このような大胆な投資がファンの関心を呼び、野球人気を盛り上げる要素となる。信じられないことを強行するから興味が湧く。そして話題になる。日本ではとうてい出来ない荒技である。イチローがシーズン中にトレードされたとき、日本では大騒ぎだったけれども、米国では単なる移籍。一夜で200億円が動く。それが大リーグの本当の顔、ビジネスの世界なのだ。

   驚いたといえば、通算354勝の大投手ロジャー・クレメンスが独立リーグと契約し、同じ25日に登板した。おとなしくオファーを待つ松井秀喜とは対照的である。

(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)