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尖閣海域に連日「4000トン級」の海洋監視船 中国は何をたくらんでいるのか

   尖閣諸島を巡って、中国が海洋監視船数隻を日本の領海内に侵入させ、攻勢を強めている。それも、日本の最大級の巡視船並みとなる巨船もあるというのだ。

   中国の漁船1000隻が尖閣の海域に来るという事態は、ひとまず回避されたようだ。しかし、大きく報道されてはいないが、中国の公船は、その後も執拗に海域に多数出没している。

海洋監視船は、日本の最大級の巡視船並み

ヘリも機関銃もある「漁政310」
ヘリも機関銃もある「漁政310」

   2012年10月2日には、海洋監視船4隻が4時間ほども日本の領海に侵入した。海上保安庁の巡視船が領海外に退去するよう求めると、正常な公務をしているとして、「船の航行を邪魔するな」と応答した。さらに、翌3日にも監視船3隻が領海内に入り、2日連続の異常事態となった。

   中国の公船が領海内に入るのは、尖閣国有化後に5回を数えることになる。

   こうした事態に、識者からは警告が出ている。

   3日放送のTBS系「朝ズバッ!」では、東海大学海洋学部の山田吉彦教授が、中国側の狙いをこう解説した。

「周辺海域の海洋調査をしている可能性が高いと思います。潮流の方向、海流の速さ、海底地形を調べるということです。それは、将来的に島を支配する態勢に入るとき、あるいは、漁船団を送り込むときに有効になってきます」

   山田教授は、中国は日本の巡視船の動きについてもデータ収集しているのではないかと言う。

   そして、監視船のうち「海監50」という1隻は、「日本の最大級の巡視船に対抗する規模を持っている」と指摘した。3980トンで、ヘリも搭載できる最先端の船でもあるというのだ。大型船は、長期の航行もできるため、長期戦に備えているともした。

   そのうえで、山田教授は、日本が油断するすきにじわりと攻勢を強めてくるとして、領海内に入れないよう巡視船の行動・計画を練り直すべきだと訴えた。

軍事行動に出るかは、識者の見方分かれる

   中国の領海侵入については、産経新聞も2012年9月30日付記事で、監視船の大型化、重装備化に警戒する必要性を指摘している。

   それによると、海洋監視船が集めたデータは中国海軍に提供され、潜水艦が航行するために活用されている可能性がある。また、中国の漁業監視船も大型化するなどしており、海保が衝撃を受けたという「漁政310」は、2580トンの最新鋭でヘリ2機を搭載していた。ヘリで上空から偵察できるほか、船には14.5ミリ連装機関銃も備えているというのだ。

   日本の大型巡視船「やしま」は5300トンで船の規模は遜色がないが、中国の船はそれ以上の機能がある可能性が強そうだ。

   中国が軍事的な行動に出るかについては、識者の見方は割れている。

   軍事ジャーナリストの黒井文太郎さんは、週刊朝日の10月5日号特集で、中国がフィリピンの南沙諸島を漁船保護の理由で実効支配したように、「彼らは本気で尖閣を『切り取り』に来ている」とした。南沙諸島では中国海軍も出動しているが、黒井さんは、尖閣についても「いずれ中国側は海軍の艦艇を派遣してくるだろう」とみる。

   一方、拓殖大学の石平(せき・へい)客員教授は、公式サイトの「チャイナウォッチ」で9月29日、中国の高官が日本の友好団体との会談に応じるなどしていることから、「力ずくで日本をねじ伏せるようなことを諦めた」と指摘した。それは、野田佳彦首相が国連で尖閣について妥協しないと宣言したことを受けて、中国が対話で領土問題の存在を認めさせる戦術に変えたからだという。

   安保条約のあるアメリカが、日本を守るかについても意見が分かれている。

   アメリカ側は、尖閣に安保が適用されるとしているが、元外務省国際情報局長の孫崎享さんは、週刊朝日の特集の中で、尖閣を守るのは日本自身の責任であり、日中の軍事衝突でアメリカは日本を守らないとした。一方、アメリカ在住作家兼ジャーナリストの冷泉彰彦さんは、ニューズウィーク日本版の9月24日付記事で、安保条約がある以上、「日本に対する攻撃は『共通の危険』であるとして、行動することになっています」と指摘している。