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環境問題で期待高まる自動車中古部品 輸送コスト上昇という思わぬ落とし穴が

   自動車メーカーが供給する修理用新品部品の半値を目標に提供してきた自動車リユース(中古)部品業界が輸送コストの上昇に頭を痛めている。

   早くて安い、ということで頼りきってきた大手物流業者の佐川急便がその事業戦略を転換、重量も形状も不ぞろいなリユース部品の輸配送から手を引き始めたことが最大の要因だ。地球環境問題その他で期待が高まるリユース部品だが、その前途が心もとない。

ドアパネル、ボンネットなどが取り扱い対象から外れる

   佐川急便は2012年9月21日付で取り扱い荷物の上限サイズを見直し、これまで「450サイズ(縦・横・高さの3辺合計450センチメートル)・重量60キログラム」としてきた上限を「260サイズ(3辺合計260センチメートル)・重量50キログラム」にサイズダウンした。これにともない、リユース部品の売れ筋商品であるドアパネル、ボンネット、バンパーなどの外装部品が取り扱い荷物の対象から外れた。

   佐川急便の持ち株会社、SGホールディングスによると「取り扱いできなくなったケースでは他の輸送手段を紹介している」そうだが、金額面でリユース部品には合わない。リユース部品業者によると、北海道から関東地方まで1枚8000円で運ばれていたドアパネルの送料が、2万5000円と3倍超える送料に跳ね上がったケースもあるという。

   一方、リユース部品の需要先、車体整備事業者では「1枚4~5万円の中古のドアパネルに2~3万円の輸送費がプラスされるのでは、リユース部品を使うメリットがない」(BSサミット事業協同組合)と断言する。

保険を適用せず自費で修理を行うユーザーが増える?

   リユース部品は、10月に損害保険各社が行った料率制度改定により、にわか注目が高まっていた。料率制度の改定は、事故増加にともなう保険金支払いが損保各社の負担になったことで実施されたもので、事故を起こすと3年間料率が大幅に引き上げられるなどの内容だ。損保各社はこうした料率改定を行う一方、事故時の支払い保険料でウエートの高い部品代金について、リユース部品を使うことで圧縮しようと動き始めたところだった。

   同時に車体整備業者も、保険を適用せず自費で修理を行うユーザーが増えると見こみ、リユース部品を活用した低価格な修理で需要を取り込もうとしていた。ようやくリユース部品の市場拡大が見込まれるようになった矢先、佐川急便の取り扱い荷物の見直しが水を差した。

   佐川急便とリユース部品業者との運賃交渉は2011年初めぐらいから始まっている。

業者側も対策を検討、低価格に抑えた運賃体系を模索

   業者側も対策を検討し、リユース部品の共有在庫グループ運営会社のビッグウェーブ(愛知県あま市)が大手運送業者の西濃運輸と11年12月に提携、低価格に抑えた運賃体系を作り、グループに加盟する会員事業者や提携先他グループへの斡旋を始めている。さらにNGP日本自動車リサイクル事業協同組合(港区高輪)、ジャプラ(港区新橋)、ブロードリーフ(品川区東品川)の各グループも西濃運輸と提携し、組合員や会員に佐川急便に代わる新たな運賃を斡旋しだしている。

   しかし、利用し始めた業者に話を聞くと「佐川急便ほど安くはない」そうだ。末端の集荷システムの違いから地方などでは「従来の翌日が翌々日となりサービス低下する」といった声もある。新運賃体系の導入が、解決策の決め手になっていない。

   リユース部品業界は、安価な輸送料を前提に運賃込みで販売してきた。大手の事業者はこれを見直し、価格が1万円を切るものについては輸送料を別途請求するようにするなど、動き始めている。このほか、グループの中で段ボールサイズを小さくし、サイズをそろえるなど、さまざまな試行錯誤を始めている。