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ユニクロ、今期は初の売上高1兆円へ 柳井会長「拡大戦略」に死角は

   ユニクロなどを展開するファーストリテイリングが2013年8月期連結の売上高1兆560億円という予想を打ち上げた。実現すれば日本の衣料関連企業として初の大台乗せになる。海外事業が本格的に貢献し始めた成果と言えるが、柳井正会長兼社長が掲げる「2020年の売上高5兆円」に向けた課題も多い。

中国反日暴動の影響は一服

   10月11日に柳井氏らが決算発表会見で明らかにした。同時に発表した2012年8月期連結決算も好調を維持している。売上高は前期比13.2%増の9286億円、純利益は31.8%増の716億円とそれぞれ過去最高を更新。アジアを中心に新規出店効果が出始めており、柳井氏は「全世界的にユニクロの認知度が飛躍的に高まった」と強調した。

   2012年8月期は中国や韓国、台湾などアジア地区でユニクロの出店を加速した。海外ユニクロ事業の売上高は前期比63.4%増の1531億円に上り、本業の利益を示す営業利益も22.9%増の109億円。海外売上高はユニクロ事業全体の2割弱に達した。「社内の英語公用語化」などをもとに進める海外展開が着々と成果をあげ始めている。

   日本政府による尖閣諸島の国有化により、9月には中国内での反日デモのあおりで一部店舗が営業停止したが、ほどなくすべての店舗で営業を再開しており、今のところ大きな影響は出ていないという。柳井氏も「今後の出店計画にも変更はない」としており、中国の店舗は今年8月末から来年8月末に約80店増やし、220~230店程度とする。さらに柳井氏が今後重点を置くのは、需要が見込めるインドネシアやインドで、中間層の消費意欲を取り込みたい考えだ。

   日本国内では低価格ブランド「ジーユー」が伸びている。売上高は約580億円と前期比でほぼ2倍となった。今後は海外展開も視野に入れている。

国内は横ばい、欧米ではヨチヨチ歩き

   ただ、「2020年の売上高5兆円」に向けた課題も見えてきている。

   まず足元の国内ユニクロ事業。2012年8月期の既存店売上高は前期比0.5%減と2期連続マイナス。営業利益は4%の減益で、柳井氏も「停滞期に入った」と認めざるを得なかった。「ニュース性のある商品が少なく、需要を喚起できなかった」(岡崎健・上席執行役員)ことも響いたようだ。今冬は暖冬との予報も出ており、保温・発熱機能もある肌着「ヒートテック」や軽量ジャンパー「ウルトラライトダウン」などの売れ行きへの影響が株式市場で懸念されている。こうした天候に左右されやすい体質も弱点と言える。

   また、アジアでは成果が出始めているとはいえ、欧米ではまだ事業としてヨチヨチ歩きで利益も出ておらず、特に米国は赤字を脱していない。柳井氏は「ZARA」「H&M」「GAP」といった世界のカジュアル衣料大手と世界で戦うことを標ぼうするが、ライバルのホームグラウンドであり、服にお金を使う消費者の多い欧米で成果をあげられるかが問われているといえそうだ。