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公認会計士の合格者数は「右肩下がり」 試験パスしても就職見つからない

   公認会計士試験の合格者数の減少がとまらない。金融庁では年間2000人以上の合格者数を目指すが、2012年は1347人にとどまった。

   背景には、企業が合格者の受け入れを敬遠する傾向があるようだ。合格者は2年の実務経験がないと資格が得られない。

上場企業の9割「試験合格者を募集したことない」

公認会計士の「卵」を採用する企業が増えるか(写真はイメージ)
公認会計士の「卵」を採用する企業が増えるか(写真はイメージ)

   2012年11月12日に発表された今年の公認会計士試験の合格者数は、昨年比で11%減、人数にして164人少なかった。

   試験は2006年、社会人など多様な人材が受験することを促すため大幅に簡素化された。金融庁は、2018年をめどに公認会計士の数を5万人に乗せるとぶち上げ、年間2000人~3000人の合格者を輩出する目標を立てた。試験変更の効果が表れたのか2007年は4041人に達したが、2010年には2041人とほぼ半減。その後も「右肩下がり」で減り続けている。

   原因は、合格者の就職難だ。最終的に資格を手にする前に2年以上の実務経験を積まねばならないが、一般企業で合格者を採用する割合が極めて低い。就職先が見つからず、そのため資格も得られない人たちが新試験制度の施行後に増えたため、金融庁が合格者を減らして抑制に努めていると推測される。

   金融庁は11月9日、東証や大証の上場企業を対象に実施した、試験合格者に関するアンケート結果を公表した。回答した776社に合格者募集の有無を尋ねた設問では、「募集したことがない」との回答が89%に達した。理由のうち6割強を占めたのが、「採用しなくても、会計等に関する知識を持った社員で対応できるため」。また、給与水準が高いと考えられる、資格取得後に退社する懸念があるという答えも3割近くとなった。

   日本公認会計士協会(JICPA)に取材すると、担当者は「試験の変更により、一般企業に広く合格者を採用してもらおうとの考えがあったのだと思います。しかし企業としては『未経験者』の採用は難しく、結果的に合格者は監査法人に就職口を求めました」と説明する。あふれるほど増大した求職者。だが景気回復の遅れもあって、監査法人としても採用を急拡大させるわけにはいかない。結局、試験にパスしながら就職できない人が大勢出てしまったようだ。

大学生は安定志向、会計士よりも公務員

   JICPAによると合格者数が減っているのは、受験生の質の低下ではないとする一方、受験者数も減少傾向にある点が気がかりだとした。絶対数が少なければ、優れた人材の確保も難しくなる。

   各種資格取得のための予備校「TAC」に話を聞くと、同校が開設している公認会計士講座の大学生の受講生数は「若干減少傾向にあります」と打ち明ける。少子化の影響もあるが、近年は公務員などの安定した職業を目指す学生が多いようだ。反対に公認会計士の場合、大量の試験合格者が出たものの、求人と求職のミスマッチが起きていることを学生が知り、敬遠するケースもあるという。

   ただ、明るい兆しも見えてきた。JICPAの無料職業紹介所が運営する求人情報サイトを見ると、試験合格者を募集する一般企業の名前が並ぶ。伊予銀行やライオン、ドワンゴと業種もさまざまだ。現時点で採用人数は少ないが、徐々に拡大していけば現在の低落傾向に歯止めをかけられるかもしれない。11月13日付の日本経済新聞は、あずさ監査法人など「4大監査法人」が採用数を前年比5割増やす計画だと伝えた。これらの変化はTACの担当者も把握しており、「就職上のミスマッチが解消される方向に動き始めたのではないか」と期待を寄せる。